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託す想い、集う人 15

「洋、ありがとう」 「おばあ様」  おばあ様の瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。 「本当によく似て……あぁ、あの子の花嫁姿を見たかったから、つい……洋を通して見てしまうことを許してね」 「許すも何も……俺がそうして欲しいんです。こんなにも母に似た顔で生まれてきた理由が見つかって、嬉しいんです。母もずっと見せたかったんだと思います」  風が吹く度に、俺のヴェールと丈の白衣がはためいた。  出航の時が来た。  そんな言葉がここには似合う。  雪也さんが潤んだ瞳で、俺たちを見めていた。 「洋くん、丈先生……素敵な光景です。かつてこの庭で、僕の兄も結婚式をしたんです。今の洋くんのように白江さんのヴェールを……あ……兄が被って……輝くような……え……笑顔を……うっ……」  雪也さんの声が、どんどん涙で滲んでいく。  思慕しているのだ。 「雪くん。泣かないで」 「春子ちゃん。あの日、兄さまがあまりに幸せそうだったのを、思い出してしまったんだ」  雪也さんが手帳に挟んだ古い写真を見せてくれた。 「これを見て下さい……僕の自慢の兄……そして尊敬する海里先生の、晴れの日です」 「あ……」  なんという多幸感!  なんという慈しみ溢れた眼差し!  それは、海里先生と柊一さんが向かい合って、顔を寄せ合っている最高の瞬間だった。  海里先生の手が、今の俺がつけているヴェールに優しく触れている。  頬を染めあげる柊一さんの美しさに見惚れてしまう。 「丈、素敵な写真だな」 「あぁ、洋も感じるか」 「うん、目を閉じると近くに感じる」  この二人が俺たちの未来を守ってくれる守護神のようだと。 「丈、進もう。光り輝く未来が待っている」 「じゃあ洋……いいか」 「え?」  丈が俺のヴェールに手をかけて、男気溢れる笑みを浮かべた。 「洋、生涯……支え合おう」  頬にキスをされて、ハッとした。  ギャラリーがこんなにいる前で! 「じょ、丈、ちょっと待て」 「誓いのキスだ。恥ずかしがるな」 「だが……っ」  そんなやりとりをしていると、おばあ様に笑われた。 「ようちゃん、はずかしがらなくていいのよ。約束のキスは神聖なものよ」 「う……」  いつも寡黙で冷静な丈が、こんな大胆なことをするなんて――  それならば…… 「丈、俺からの返事だ」  俺は丈の唇に自分からキスをした。  どこにこんな大胆な気持ちが隠れていたのか。  何かが目覚めていくようだ。 「よ、洋――」  丈が狼狽している。  一方で歓喜の声が聞こえてくる。   「まぁ! 素敵よ! 海里先生と柊一さんと同じくらい絵になる二人ね」 「おぉ、いいな!」  真っ先に拍手をしたのはおばあ様と春子さんと流さんだった。 その後、翠さんと雪也さん、桂人さんとテツさん、春馬さんと秋くんが揃って祝福してくれた。  いいな、ここは……居心地の良い場所だ。  ここは俺のルーツ。俺の母を幼少期から家を出るまで見守ってくれた人たちが集まっている。  湧き上がってくる歓喜の気持ちが、俺の中に流れる母の血を高揚させていた。 「洋? 随分と顔が赤いぞ。大丈夫か」 「それは……俺の中の母が喜んでいるのさ」 「そうか……私は洋に出逢えて本当に良かった」 「俺もだ! こんな幸せな日を迎えられるなんて、あのテラスハウスの前に立った時には思いもしなかった」  

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