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ある晴れた日に 7

 昨日は流と丈と月見台で酒を酌み交わした。  酒が心を解き、月が僕たちの関係を引き上げてくれた。  もう凸凹じゃない。  僕たちは同じ場所で円となり、縁を大切に生きていく。  僕たちのために建てた離れを見上げた。  よく晴れた日だ。  茶室、アトリエ、衣装部屋……檜の風呂場。ここは全部……流が僕のために愛情を込めて設計してくれた。  一歩、また一歩。  流に会いたい気持ちが溢れてくるよ。  もう一人では、歩けない。  僕の人生には流が必要だ。  内から外から……僕をしっかり支えておくれ。  襖を開けると、大の字で豪快に眠る流がいた。  目を細めて、その姿を見守った。  それから……力強い胸の鼓動に耳をあて、安堵した。  平静を装って、僕は流を起こす。  これが僕らのいつもの朝だから―― 「流、そろそろ起きないと」 ****  俺が眠っている間のことを、布団に捲き込んだ翠の口からゆっくりとじっくりと聞いた。  喜びが隠せない。  翠と迎えるいつもの朝が眩しくて。 「しかし、丈には負けられないな」 「何の話?」 「リンゴはまだあったか」 「うん?」 「じゃあ俺は翠のために、飾り切りをしてやるよ」 「ふっ」 「何を笑う?」 「いや、すごいのが出来そうだ。切磋琢磨して来たんだな。流と丈は……」 「余裕だな、翠」    翠はいつになく上機嫌で、達成感のある表情を浮かべていた。  そんな翠の肩を掴み、組み敷いて、濃厚なキスを落とした。 「ん……あっ……もう、戻らないと」 「小森に頼んできたんだろ? 翠もこうして欲しくて」  翠の頬が上気する。 「そ、そんなこと……」 「何分だ?」 「……30分と」  時計を見ると、あと20分は俺たちの時間だ。 「明るい場所で……翠の身体を見たい」 「え……っ」  翠が自分で来た袈裟は、緩く乱れていた。  いずれにせよこの後、一度脱がさないといけないのだ。 「あ……」  翠が身体の力を抜くのが……返事だ。 「んっ」  鼻にかかるような声を零す翠の身体を、忙しなく露わにしていく。  滑らかな皮膚を吸い上げ、見えない部分に所有の痕をつけていく。  手術前は無理だから、今のうちだ。 「んんっ」  赤く色づく肌に生身の身体を抱いていることを実感し、興奮してくる。  遠い昔、この世と分かれる寸前まで、湖翠さんを求め続けた流水さん。  あの日、あなたの手が掴んだのは、未来への切符だったのかもしれないな。  あなたの願いは、今、叶った。  憧れ恋し続けた兄は、俺の中にいる。  もう離れない、離さない場所にいる。 「流……流とこんな風に朝を迎えられて……本当に良かった」  翠も同じことを考えていたようで、透明な雫を流しながら、俺の首筋に手を回し、ギュッと力を込めてしがみついてきた。 「翠、愛している」 「愛しているよ、流」     美しい人生は、ここに在る。

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