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ある晴れた日に 17

一流ホテルのエグゼクティブルームに、丈と二人で泊まる。 普段しないことなので、緊張してきた。 「こちらのお部屋です」 「ありがとう」  流石一流ホテルだ。男同士で意味深な雰囲気で泊まっても、変な目で見られない。それにしても、丈は始終堂々としているな。もしかして俺だけ意識し過ぎているのか。 「洋、夜景が綺麗だな」 「あぁ」  17階の部屋の窓には煌びやかな都心の夜景が広がり、そして正面には東京タワーが見えていた。   「北鎌倉の夜は真っ暗なのに、都心の夜景は華やかだな」  窓辺に立つと少しだけおぞましい過去を思い出しそうになったが、そんな時はすぐに丈が掬い取ってくれる。 「洋……せっかくの機会だ。ラウンジのカクテルタイムに行って見ないか」 「だが……」 「今日の洋の姿が素晴らし過ぎて、すぐに脱がすのが勿体なくなってきた」 「何を言って……でも少し腹も空いたな」 「ふっ、最近の洋はいろんな欲が出てきて、いい傾向だ」  丈が不敵に微笑みながら、俺の腰からヒップを撫でてきた。 「ここは相変わらずスリムなままだな。もう少し肉がついてもいいのに」 「いっ、いやらしい言い方するなよ」  そんなわけで、俺たちは高層階のラウンジへと移動した。  ビールにスパークリングワイン、赤、白ワインにウイスキーにカクテル、 ありとあらゆるお酒が並んでいた。 「洋は何を飲む?」 「俺は、何かカクテルがいいな」 「リクエスト出来るそうだぞ。洋にぴったりなのを頼んでくるよ」  丈が頼んでくれたのは、淡いすみれ色で美しい夜空をイメージしたカクテルだった。 『ムーンライト・セレナーデ』

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