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ある晴れた日に 18

「洋、それくらいにしておけ。そろそろ部屋に戻ろう」 「ん……」  丈の勧めてくれたカクテルは、とても飲みやすかった。それに丈から贈ってもらった言葉が嬉しくて、酔いしれてしまった。 『頼りにしている』  それは……脳内をリフレインしている言葉だ。  俺は丈に抱かれる立場だが、ただ守られるだけの人にはなりたくはなかった。  今までは……あまりに非力で、あまりに深手を負ってしまい、丈の庇護のもと世間から姿を消すように生きるのが安らぎだった時期もあるが、人の心は変わっていくものだ。  部屋に戻ると、宝石箱をひっくり返したような目映い夜景が出迎えてくれた。  もう怖くない。  もうこの夜景に支配されることはない。  俺は俺として……今はちゃんと息をしているだろう? 「丈……丈に癒やしてもらったこの身体、この先も丈に捧げて生きていくのは変わらないが、これからは二人で支え合って生きていけるのが嬉しいよ」 「そうだ。洋は私のパートナーだ。今後は……由比ヶ浜で……公私ともにな」 「ふっ、よろしく、丈先生」 「その呼び方は照れ臭い。今から私は洋を抱くのに」 「抱いてくれ」 「あぁ」  カクテルのせいか、俺は身も心も高揚しきっていた。  早く触れて欲しい。  丈に貫いて欲しい。  そんな淫乱なことを思う程に、丈に酔いしれていた。  自分でおばあ様に着せてもらった衣類を脱いで、先にベッドに上がった。 「洋……今日は大胆だな」 「丈が脱がすのが惜しいと言っていたので、自分で脱いだんだ」 「ふっ」  丈がスーツを脱ぎ捨てていく所作が美しくて、照れ臭くなった。  あの雄々しい身体に抱かれる。  全裸になった丈が、すぐに俺にのし掛かってきた。  まずは唇を啄まれた。  二人の吐息と唾液の絡み合う湿った音が、夜の静寂に広がっていく。  どんなBGMより甘い音。  丈の大きな手が、俺の肌質を味わうように、じっくりと巡っていく。  丈の、この手が好きだ。  この手に救ってもらい、この手に抱いてもらい、この手で羽ばたかせてもらった。    俺が身動ぐ度に、二人の男を受け止めるクイーンサイズのベッドが軋んだ。 「うっ……ん……」  遊びのような接吻は、やがて濃厚なものへ変わっていく。  丈が舌を挿入し、過敏な口腔内に潜ってくれば……感じすぎて、呻き声をあげてしまった。  俺の弱い部分を的確についてくるのだから、たまったものではない。  顎の裏や過敏な首筋も唇で愛撫され続けて、ひっきりなしに声を漏らしていた。 「声……もっと出していい。ここは高級なホテルだ……今宵は沢山聞かせて欲しい」 「ふっ……あぁっ、んっ」  丈は既に俺の性感帯を知り尽くしている。  そのまま乳首を指先で捩られると、頭の中が痺れた。 「んっ……くっ」    リズミカルに的確に愛撫を施されるので、俺は少しもじっとしていられなくなり、腰を捩り、熱い吐息で埋もれそうになっていた。  もう何度抱かれたか分からないのに、初々しく反応して震える身体が、丈を喜ばせる。 「洋……」  丈がじっと俺を見つめている。 「洋は、ここでは私のものだ」  丈からの独占欲が、心地良い。だから俺からも丈を抱きしめる。 「それでいい。それがいい」 「洋……この先も離さない」 「俺も離れない」    低い声で囁かれると、自分の頬がじわっと火照ったのが分かった。  露わな欲情に塗れた二人は、腰を自然に寄せ、摺り合わせた。  ホテルといういつもと違うシチュエーションが、二人を燃え上がらせていくのだ。  丈が俺の胸を吸い上げ、花弁を散らしながら、右手を太股も内側に忍ばせてきた。  そして付け根の際どい部分までいっきに撫で上げられ、息を詰めた。 「んっ……」 **** 「んっ……」  ホクロを辿られていたはずなのに、いつの間にか僕は檜の湯船の縁に座っていた。  流が僕の前に屈み、すでに半勃ちになっていたものを大きな手の平で包んだ。 「やっ……こんな明るい所でいやだ」 「翠……離れの防音には、かなり気を配った」 「なっ」 「だから今宵は声を聞かせて欲しい。翠が俺に感じる声が聞きたいんだ」  息を詰めていると……流がゆっくり僕の性器を扱き出す。  堪えきれないよ、あぁ……駄目だ。漏らしてしまう……!  僕の息は、どんどん荒くなっていた。  

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