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身も心も 1

 ホテルの一室で、目覚めた。  昨夜は夜景を楽しみながら抱き合ったので、カーテンを開けっぱなしだった。だから……朝日が大量に差し込んで、私達を光の洪水で包んでいた。  目映いまでの、白い世界。    私の隣りで……真っ白なシーツに埋もれる洋の寝顔を美しくて、見惚れてしまった。  清らかな顔立ちは、年を重ねても衰えを知らず、ますます匂い立つようだ。長い睫毛が朝日に照らされ、陰影を作っている。  お互いにまだ何も身につけていなかったので、洋も白い背中を無防備に剥き出しにして寝息を立てていた。  洋の……薄い肩……肩甲骨を、そっと指で辿ってみた。  昨日はどこまでも執拗に抱いてしまった。  私の手によって洋の感情を高めて艶めかせるのが、溜らないのだ。  私の色に染まり、はしたなく喘ぐ洋は絶品だった。 「初めて会った時、テラスハウスで……この背中に羽が生えているように見えたな」 「ん……丈、もう起きていたのか。お……はよう」 「おはよう、洋」  擦れた声で気怠げな様子の洋の肩を、今一度抱いて、温もりを確かめた。 「出逢った頃はいつも不安だった。洋がどこかに消えてしまいそうで。美しい羽で羽ばたいていってしまうのではと……心配だったんだ」 「知っているよ。だから俺を縛り付けるように抱いていたよな」 「すまない」 「いや、嬉しかった。どこにも行けないように抱いてもらうのも……丈だから嬉しかった」 「束縛してないか」 「ふっ、今更何を? 俺は全部許しているのに」  洋の顎を掴んで、チュッと唇を重ねた。  うっすらと桜色に染まった唇を塞ぐと、洋は艶めいた声をあげた。 「あっ……」  背中を撫でていた手を、胸元に回し……乳首を指で挟んで揺らしてやると……洋が困惑した顔で見上げてきた。 「じょ……丈? またするのか」 「駄目か。チェックアウトの前に、もう一度……洋が欲しい」 「ん……いいよ。丈……とても清々しい朝だ、丈に抱かれる所から始めたい」 「洋……」  洋は私を見上げ、そのままゆっくりと目を閉じた。 「来て……」  甘い誘いで目覚める朝。  こんな朝もいい。  洋だから、洋とだけ、味わえる特別な朝だった。 **** 月影寺―― 翠、入院前夜。 「流、ちょっといい?」 「何? 母さん」 「翠の入院の支度は、もう整ったの?」 「大体は……そうだ、病院の室内履きと羽織るガウンを探しているんだ。知らないか」  すると、翠の入院のために一時的に戻っている母がニヤリと笑った。  どうにも不吉な笑みだと後ずさりして怯むと、母は苦笑した。 「なぁに、その顔は? いやな子ね、警戒しちゃって……あなたが喜ぶと思って声をかけたのに」 「なんだ? あるのか」  俺が喜ぶことって、絶対に翠のことだよな? 「そうよ、納戸の桐箪笥の整理をしていたら、翠の高校時代のものが沢山出てきて、何か入院に使えるものがあるかもしれないから、流が確認してみて」 「高校時代! どれだ! どこだ!」  俺は母を押し退け、納戸の引き戸に手をかけた。      

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