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身も心も 3
「流……待って、どこへ」
「納戸だ」
「納戸?」
一階に下りると、また手をグイッと引っ張られた。
こういう所は、小さい時と変わらないな。
『にに~、こっち、こっちぃ、おいでー』
歩けるようになると、すぐに僕の手をグイグイ引っ張った弟。
僕にはない行動力、活発な性格。
悪戯っ子で無謀で、よく祖父や両親に叱られては、びえんと泣いて僕の膝に泣きついた可愛い弟。
恋人同士になり、身体を重ね合うようになっても、見え隠れする本来の気質に安堵しているよ。
流は、そのままでいい。
それが僕の好きな姿だ。
「しかし、何をしていたんだ? あーあぁ、まるで納戸に泥棒が入ったようじゃないか」
「とにかく、これを見てくれ。お宝発見って言っただろう。ほら、これなんてどうだ?」
突然胸にあてられたのは……
「これって僕が高校の時、着ていたジャージ?」
「そっ、まだ着られるだろ!」
「えぇ?」
「他にも当時のスクールバッグなど出てきたぞ! お宝がザクザク出来てて興奮してたよ」
「そ、そうか……母さん、よく取っていたな」
そのま納戸の鏡の前に立たされた。
体操着の上……つまり濃紺のジャージを羽織れと?
「こんなの小さいよ、もう……っ」
「いや、翠のサイズは、高校時代から大差ない」
「なんで知って……? あっ」
しまった! 墓穴を掘った。
「それを俺に聞くのか、翠」
耳もとで、低い声で囁かれてゾクゾクとした。
「翠の身体のサイズなら全て知っている、手の大きさも」
手を恋人繋ぎで絡めとられる。
「手首の細さも、腰の細さも、全部記憶しているよ」
流の手が僕の身体を撫でて、蠢く。
「んっ……だめだ、よせ」
「翠、静かに出来るか」
「無理だっ」
母の部屋に近いので声を殺すのに必死だ。
手が更に……下半身へと降りてくる。
その時、廊下の向こうから流を呼ぶ声がした。
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