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2022年 特別番外編『Happy Halloween 月影寺・朝』
季節感なくて申し訳ありません。
エブリスタからの転載です。
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「もうすぐ10月も終わるね。あ……もしかして流、今年もやるの?」
「もちろんやるさ! 近所の評判にもなっているしな、お寺ハロウィンは最高だ」
「でも一昨年の衣装は破れて捨てたし、去年は流が鼻血で汚したし……」
ぶつぶつ言っていると、流が快活に笑った。
「なあに心配するなって! 今年はすごいぞ。俺が皆のために衣装をデザインして、作ったんだから」
「え? まったく……夜な夜な何をしているのかと思ったら」
「翠? もしかして一人寝が寂しかったのか」
「さ……寂しくなんかないよ!」
それは嘘だ。
最近……朝夕、気温がぐっと下がり、人肌恋しかったんだ。
流が来てくれいから、寒かったんだ。
「今夜は行くよ」
「よっ、呼んでない」
「翠、素直になれ」
ハロウィン当日。
寺の本堂に、一同が集められる。
「いいかい? 今日のイベントは寺の存命に関わる。皆、心して衣装を受け取り、なりきっておくれ」
って……どうして僕がこんな台詞を?
流がウキウキと一人一人に衣装を手渡す。
「きゃー! 僕はカボチャ饅頭のおばけですよ」
まず喜ぶのは小森くん。
は……鼻息が荒いね。
「住職さま~ 僕、もう二十歳です」
「うん?」
「その、菅野くんと出会い、ちょっと大人になりました」
「そうだね」
「だから今年の僕は、子供たちを泣かせますよ」
「はい?」
「かぼちゃのオバケは一番怖いんです!」
フンと鼻を膨らませているが、あどけないだけだった。
すると丈が隣で衣装を確認し、険しい声を出した。
「兄さん! これは、なんです?」
「流さん、ずいぶんひらひらしていますね」
洋くんは冷ややかに笑っている。
「あー 丈と洋は織り姫と彦星な。お前達は七夕に結婚式をあげたから、今流行の中華BLの衣装からヒントを得て、アレンジしてみた」
「へぇ、成る程、俺もあのドラマは観ました。いいですね」
洋くんは今度は感心した声を出した。
「私は……不安でしかないですよ」
洋くんはまったく気にしていないようだが、丈は顔が引き攣っていた。
「流、ところで僕は何?」
「怖い怖い魔女はどうだ?」
「住職がそれはまずいんじゃないのか」
「そう言うと思った。じゃあ執事なんてどうだ?」
「なんだか投げやりだな。どうせ脱がせば同じだとか思ってないよね?」
流がニヤリと笑う。
はっ! 僕、今、何を言って……?
は、恥ずかしい。
「そう怒るなって。翠は何を着ても可愛いよ。いや……着ていなくても最高だ」
「も、もう――そういう流は何を着るつもりだ?」
「翠と薙とお揃いで、メイド服にしようかと準備した」
薙がワクワクした顔で近づいて来る。
「流さん、それイイネ! オレたちは今日は案内役だろ? 父さんも一緒に着ようぜ!」
「ははは、ノリがいいな」
「二人とも……全く」
と言いつつ、流と薙と三人でお揃いの服を着るのは、嬉しかった。
僕たちは親子だから……
薙は、僕たちの子だから。
さぁ、夕方には月影寺ハロウィンのスタートだ!
夜に続く💕
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