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2022年 特別番外編『Happy Halloween 月影寺・夜』

 日没後、カボチャのランタンを至る所に置いた月影寺に、近所の子供たちが大勢やってきた。 「ようこそ! 月影寺ハロウィンへ」 「わーい!」  俺と翠と薙は、お揃いのメイド服でお出迎え。  イケメンメイドと美人メイドと、カッコ可愛いメイドだ。  どうだ? 参ったか!  と見せ付けるが、子供たちの関心は、おばけとお菓子だった。 「ゴックン……では小森風太、先陣を切ります」 「よーし、行け!」 「ひゅううううう、ドローン、ドローン、かーぼーちゃーのおばけーだぞー」  小森がおどろおどろしい表情と声で子供たちの前に現れるが、誰ひとりとして驚かない。 「おいしそうだね」 「うん。たべていいのかな?」 「ぎゃー‼ 食べないでくださいよー 僕のカボチャ饅頭なのに」  小森は逃げ戻り、膝を抱えてしょんぼりしている。 「くすん……どうせ僕は役立たずですよ。どうして驚いてくれないのかな? 住職さまぁー 僕、怖くないですか。ひゅううううう、どろんどろん」  見かねた翠が、薙に「ヤレ」と指示を出す。  「うぉー! びっくりしたぜ。カボチャのオバケだ」  薙に続いて、翠も迫真の演技だ。 「わぁぁー カボチャのおばけだ! 助けてくれー 流っ」  ちょ、可愛すぎだろ?  翠が俺の元まで走ってきて目配せする。 「流も怯えて!」  おいおい、そーくるのか。 「きゃー、きゃー、きゃー」  まずい! 棒読みだ。  小森にじどっと睨まれる。 「流さんは……流さんは……くすん」  やべー アイツ絶対泣くぞ!  いいタイミングでやってきたのはハロウィンなのに仮装一つしていないスーツ姿の菅野くん。  いかにも善良な市民で、真っ先にオバケの餌食になるやつだ。 「ひゅぅうううう、どろどろーん」 「ぎゃー‼‼」 「か、菅野くん、大丈夫。僕ですよ。小森風太です!」 「なんだ風太か! マジ驚いたよ! でも超可愛い」  むぎゅっと抱っこしあう二人に、勝手にやってろと思う。  すると黄色い声が聞こえてきた。 「キャー!ご住職さま、写真、撮っていいですか。息子さんも一緒に」 「ご住職のメイド姿なんてレアだわ」 「いやいやいや、写真はご遠慮下さい。住職こちらへ」  やれやれ……やっぱり目を離した途端これだ。  子供の引率のお母さんたちに掴まった翠と薙を回収するが、また新たな悲鳴が聞こえて来た。 「きゃー! 狼男だー!!!」  ん? 今回は狼男の仮装なんて作ってないぞ?  目を凝らすと……  月光に照らされた中華BL姿の丈と洋。 (違った。織り姫と彦星だったっけ? 自分が作ったのがなんだったのか、分からなくなった。こだわりは洋くんの衣装の透け透け度だけ!) 「ガォー! 織り姫に近寄るな! ぐるるるうー ガォー!」 「キャー! こわいよぅ」  何故か牙を剥いて爪を立てて狼男の真似をする……弟よ。  お前、アホか。  ほぅー 月光を浴びた洋くんは、身体のラインが限りなく透けて見えて、天女のように芳しい。流石だな。あの衣装を着こなせるとは! 「丈、子供を泣かすなよ」 「洋の服装が悪いのだ。どうして洋だけそんなに透け透けなのだ? つぶらな乳首も細いウエストも……ほっそりとした足も……何もかも丸見えだ‼‼」  あーあー、寺庭の真ん中でそんな事細かくエロいこと説明しちゃって。 「じょ……丈、もう黙れ! お前なんて嫌いだ」  洋くんが真っ赤になって怒っている。  当たり前だ。  丈と目が合うと「兄さんっ‼‼」とお怒りの声が。  やべぇ、とばっちりが。 「そう怒るなって。丈には、これをやるから許せ」 「なんです?」 「とっておきの流血グッズだ」 「はぁ?」  渡したのは、去年翠に着せたネグリジェ。  流血度が高いヤツ(実際シミがついてる) 「ほぅ……ネグリジェか……なかなかいいですね。じゃあお礼に洋の衣装をあげますよ」 「お礼って……それ俺が作ったんだぞ?」 「これ……天女のような翠兄さんにも、似合いそうですよね。もしかして最初からそのつもりだったのでは?」  丈が不敵に笑う。  あーあ、お見通しかよ。  実は作りながら、翠に似合いそうだとニヤニヤしてたのさ!  だから特に手間暇かけてしまった。  最上級の生地でな。 「交渉成立だな」 「えぇ、夜は大人のハロウィンをお互い楽しみましょう」  お寺ハロウィンは早々に店仕舞いだ。  さぁ灯りを消して忍び込もう。    愛しい人を抱き潰しに。  フフフ…… ****  流は今年も張り切っていたな。  流はまだまだお子様だ。  さてと……今年はこんな透け透けの衣装を着せて、僕をどうするつもりなのかな?  あ……でもせっかくの美しい衣装が、また鼻血で汚れたら勿体ないね。  先に脱いでおこうか。  いや、流の楽しみを奪うわけにはいかないか。  布団に正座して葛藤していると襖が開いた。  さぁ、今年もドラキュラ伯爵のおでましだ。  僕は吸い寄せられるように、自らドラキュラ伯爵に手を伸ばした。 「あ、ちょっと待って、流……今日は汚さないように」 「え? 抱いちゃダメってことなのか」 「馬鹿、違うよ。また鼻血を出すなっていう意味だよ」 「ひ、酷いな。翠はムードないぞ!」 「あっ……」  そのまま押し倒され、透け透けの衣装を大きな手でかき乱された。  いいよ。  何をしてもいい。  流の望むままに、抱かれよう。  今宵はハロウィンだ。  甘い甘いお菓子になるのが、僕の役目。 「流……今日は好きにしていいよ」 「翠は寛大すぎる」 「一人の夜は……寂しかったんだ」 「可愛いことを……今日は寝かさない」 「うん、そうしておくれ」 あとがき **** 賑やかな👻月影寺ハロウィン🎃でしたね。 流と翠と薙 丈と洋 菅野くんとこもりん 3カップルにこちらでは登場してもらいました。 皆さんのアイデアとペコメでのおしゃべりのいいとこ取りでした😆 ご協力ありがとうございます!  

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