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新春特別番外編 雪の毛布 5

「ヨイショ、ヨイショ」  小森が雪をかき集めて、一生懸命何かを作っている。  雪だるまかと思ったが形が少し変だぞ。  丸と長方形? 「何やってんだ? 眠ってる雪だるまか」 「ち、ちがいますよ。これは人ですよ。人!」  雪だるまにしては胴体が長いと思ったら、なんと人間を模していたのか! 「さては愛しの菅野くんか」  冗談で言ったのに、小森は顔を真っ赤にして、その雪だるま人間に抱きついた。 「かんのくーん、あいたいです-」  おぉ! 恋する小坊主よ。  可愛いな。 「どれ、ちょっと貸せ。アイツは平凡な顔立ちだから簡単だ」  彫刻には自信がある。  芸術大学卒業の腕を舐めんなよ。  雪まつりで雪像作りの助っ人をしたこともある腕前なのさ。 「ほれ、どうだ!」 「こ、これは、まさに、か、かんのくーんです。かんのくーん」  こんなことで大喜びするなんて、夜な夜な翠を抱いている俺は申し訳ない気分になった。 「小森、管野くんをここに呼べよ。お前たちさ、今年はもっと会えよ! 好きなら一緒にいる時間を意識して増やせよ」 「は、はい! 師匠!」  小森が目を擦りながら、ニコッと笑う。  寺の住み込みになってから小坊主の仕事に没頭していたが、健全な二十歳の男としての人生も歩んで欲しいさ。  お前たちには回り道をして欲しくない。  月影寺は全てを守る空間だ。  思う存分恋をして、愛し合うといい!  **** 「流、流、聞いておくれ」  珍しく翠がはしゃいでいる。 「どうした? 兄さん、ご機嫌だな」 「……こんな時だけ、兄さん呼び?」 「どうしたんだ?」 「この前手紙を出した返事が来たんだ」 「あぁ東弥と静留くんか」 「そうなんだ。さっき東弥くんから電話があって……今度の週末に遊びにきてくれるそうだよ。雪……それまで持つかな?」  雪見障子から見える日本庭園には、まだ真っ白い雪がたっぷり残っていた。 「どうやら週末にかけて再び雪が降るとニュースで言っていたぞ」 「そうなの? せっかくだから雪遊びをして欲しいから、それは良かった。あぁお茶菓子は何がいいかな? あの子は何が好きかな?」  来客に夢中な翠。  俺を見て欲しくなり、強引に引き寄せてしまう。   「そろそろ、こっちに来いよ」 「あっ」  袈裟を脱がして長襦袢姿になった翠を背後から抱きしめて、その胸元に手を遠慮なく滑り込ませ、大きく撫で回し、胸の小さな突起を探し出す。  クニクニと小さな乳首を摘まんで揉みほぐしてやると、翠が前屈みになって頼りなく震える。 「あっ……」 「感じるか」 「……ダメだ、そこは……」 「綺麗だ。翠は欲情し出すと、首筋から朱にうっすらと染まっていく。色づいていく」 「あぁ……っ」  胸元につけた牡丹を露わにして上書きするようにキツく吸い上げると、翠がぐずぐずに蕩け出す。 「流……さっきから何を見て?」 「牡丹の色合いだ。ふむ……赤の色が濃すぎたか。もっと濃淡を出さねば」 「一体、何の話?」 「あぁ、絵の具の調合さ」  翠が少し寂しそうな表情を浮かべる。  だがその翳りのある顔が、ぞくぞくするほど色っぽいことを知っているか。   「流……僕だけを見てくれ」 「すまん。余所見したわけではないんだ。焼き付けたくて……」  正月も三が日を過ぎれば、初詣で賑わっていた寺も徐々に平穏を取り戻していく。  俺と翠の睦み合う時間も増えていく。 「翠、翠に包まれたい」 「甘えん坊だね。いいよ、流、おいでよ。今宵も僕の中に……」  そして、いよいよ週末。  夜更け過ぎまで降った雪のおかげで、再び月影寺は見事な雪景色となっていた。 「そろそろ到着のようだよ。流、お迎えを頼む」 「了解!」  俺は呑気な足取りで、東弥と静留くんを迎えに出た。  ****  この続きをなんと沈丁花さんが静留くんと東弥くん視点のクロスオーバー作品として書いて下さっています。  エブリスタエッセイ 750ページ目に掲載しますので、ぜひお読み下さい。  情緒のある素敵な文体で、くすっと笑える可愛いお話で最高でした。  沈丁花さんありがとうございます! ⇩⇩コチラから読めます! https://estar.jp/novels/25768518/viewer?page=759

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