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翠雨の後 28
久しぶりに抱くせいか、涼の蕾は固く閉ざされていた。
幸い、今日は時間がある。だから慎ましい入り口を吐精したものを纏った指でじっくりと解し広げてやると、涼も自ら足を広げ力を抜いて身を任せてくれた。
「そうだ、いい子だな」
ここからは絶対に身体を傷つけたくないので、一段と慎重になる。俺のデカいものを全部受け入れてくれる涼に感謝の気持ちを込めて額にキスを落とした。
そのまま涼の反応を丁寧に拾いながら指で狭い中をトンっと押すと、感じる部分にダイレクトにあたったらしく、大きく震えて狼狽えた。
「あっ……待って、そこは……」
「ここか」
「あっ……あっ……んっ、ん……安志さん、もう……もう……大丈夫」
「気持ちいいか」
「あっ……んっ……ふっ……んんっ……」
涼の弱い部分ばかり集中的に攻めると、切なげ声をひっきりなしにあげては瞳を潤ませ、過敏に反応してくれた。
俺からの愛撫を素直に受け止めてくれる若い身体が、可愛くてたまらない。
こんな艶めいた表情を見せてもいいのは、俺だけだ。
涼に抱く独占欲が膨れ上がる!
「……あ、安志さんで、埋め尽くしてよ」
少し背伸びした言葉に、思わず笑みが漏れる。
「あぁ、挿れるぞ」
ほっそりとした長い足を抱え直し、熟れた蕾に昂ぶったものを当ててズンっと腰を進め、一気に挿入した。
「うっ……」
衝撃に一瞬痛みを耐えるような表情を浮かべるのが、切ない。
切ないけど、もう止められない。
「大丈夫か」
「ん……大丈夫……ぁぁ……」
涼の中に最後まで挿入すると、涼は眉根を寄せて、はぁはぁと肩で息をした。息が整い、俺と涼がいい塩梅に馴染むのを根気よく待ってから、耳元で囁く。
「そろそろ、動いてもいいか」
「うん……はぁ……っ、はぁ……あぁ……っ」
圧迫感を感じながら腰を揺らすと、涼は胸を上下させて、くぐもった声を上げ続ける。
「あ……あっ……んっ」
「涼、好きだ」
「僕も安志さんだけ」
確かめるのように囁きあって、そのままディープキスをした。
互いの舌を絡めながら全ての器官の密着度を深め、極限まで昇っていく。
「あぁ……っ、はぁ……っ」
奥を穿つ度にぐちゅぐちゅと卑猥な水音が広がり、涼のものも切なく勃ち上がり先走りを放ち、俺の腹を濡らしていた。
「涼の、可愛いよ」
「気持ち良くて……あぁ……どうしよう」
「いいんだ。素直に感じてくれ」
淫らに喘ぐ涼。
かなり強く感じているのが伝わって、最高に嬉しい。
一際大きく腰を揺らすと涼の締め付けも一層キツくなり、いよいよ堪えきれずに最奥で精を放ってしまった。涼も同時に弾けてくれた。
「あぁ、あっ――」
「くっ!」
一気に注ぎ込むと涼は頬を染め、背中にうっすら汗をかいて、腕の中で痙攣したように震えた。
「あっ……あぁ……」
弛緩した身体をもう一度深く抱きしめて、再び優しいキスを落とす。
「涼、ありがとうな……すごく気持ちよかった」
そのまま暫く抱き合い、やがて呼吸が整ったのを合図に俺のものを引き摺り出すと、ギュッとしがみついて来た。
「どうした?」
「今日は……安志さんをいっぱい感じられて幸せだった」
「おいおい、まだ過去形にするな。まだまだこれからだ」
「え! ちょ、ちょっと待って、正気を無くす前に伝えたいことがあるんだ」
「なんだ?」
涼はここ数日抱え込んでいた不安を薙ぎ払えたようで、明るく微笑んでいた。
「安志さん、いつも僕を信じてくれてありがとう! 僕はあなたに信じてもらえれば大丈夫だ。それがとことん分かったよ!」
「あぁ、俺はいつも涼の味方だ」
「あの……少し夜風に当たっても?」
「ん? いいよ」
涼がむくりと起上がり、障子をスッと開けた。
流石……若いな。
情事の後でも、元気一杯だ。
月が雲間からまた出て来てきたようで、月光が涼の若木のような身体をふわりと包み込んだ。
「安志さんは、僕の大好きな人で僕の恋人だ!」
突然、涼が夜空に向かって叫んだ。
それは俺にとって最高の言葉だった。
「涼、どうした? 急に」
「えっと、月に宣言したくて」
「俺も宣言するよ。涼は俺の恋人だ! 俺はいつも涼を信じている。俺たちが信じ合えば、どんな困難でも乗り越えられる!」
「安志さんに抱いてもらって……燻っていた思いをすっきり吐き出せたし吹っ切れたよ」
「良かったな」
お互い一糸纏わぬ裸のまま、窓辺で抱き合った。
端から見たら、なんとも際どいシーンだが、ここなら安心だ。
俺たちを守ってくれる月しか見ていないから。
「安志さんは信じ合える相手だ」
「涼と巡り逢えて幸せだ」
「なんだか僕たち月光のスポットライトを浴びているみたいだね。気持ちいいよ」
撮影や追っかけで、人工的な光ばかり浴び疲弊した涼に必要なのは、月影寺に降り注ぐ柔らかい月の光だったのだ。
そのまま布団に涼を押し倒し、一つになることを何度か繰り返し……最後には勢い余って首から胸を強く吸って痕をつけてしまった。
「いいよ……つけて……1週間はオフなんだ……だから……つけて欲しいよ」
涼は嬉しそうに目を細めて全てを受け入れ、そのまま意識を失った。
涼の身体を清めてやり、布団に静かに眠らせた。
涼の寝息を聞きながら俺も横になってみたが、目がギンギンに冴えて眠れなかった。
「参ったな、これじゃ十代の頃みたいだ」
どうやらエネルギーが満タンにチャージされたようだ。
実は俺もかなり涼が不足していたことに、今更ながら気付いた。
そろそろ、仕事に戻らないとならない。
「よし、行くか」
手早くブラックスーツに着替えネクタイをキュッとしめると、一気に気も引き締まった。
「涼は暫くここにいるといい」
綺麗な形の額を撫でて、離れの宿坊をそっと抜け出した。
東雲《しののめ》
東の空がわずかに白み、夜明けを感じる。
この時間は、昔から少し苦手だ。
だが今は違う。
涼を抱き潰し迎えた朝は、力が漲っていた。
山門に向かうと、横から箒の音が聞こえた。
朝から作務衣姿で熱心に落ち葉を掃くのは、流さんだった。
「よぅ! 安志じゃないか。やっぱり来ていたのか」
「はい!」
「しかし、昨夜の月は出たり入ったりと忙しなかったな、ははっ」
月のことを言っているのは分かったが、涼の中にせっせと出入りした自身を思い出し恥ずかしくなった。
「おいおい、案外初心だな。そんなに照れんな、一本気な安志くんよ。今日は満ち足りた満月のような顔だぜ~」
「あ……いや、その……」
「安心しろ。ほとぼりが冷めるまで月影寺で涼くんを預かるよ。彼にとっても良い骨休めになるだろう」
「……ありがとうございます。ここは俺たちにとってもオアシスです」
「そうか、安志もこの寺の醍醐味が分かるんだな。ここはいい……世の常ではないことも、全部月が受け止めてくれる……月は今も昔も俺たちの味方だ」
「はい」
ポンと肩を叩かれる。
「君は不安を安心に変えられる男だ。いつも明るい太陽のような明るい気を放っている! あのさ、今日は薙の高校入学式なんだ。晴れの日に未来へと続く道を、君が一番に歩いてくれるのは縁起がいいな!」
ドンっと背中を押され、俺は本堂から真っ直ぐに続く道を胸を張って歩き出した。
堂々としていよう。
誰が何を噂しようと、俺と涼の中で信じ合えているのなら何も怖くない!
「よしっ、今日も頑張ろう!」
朝日を背負って、月影寺から一気に飛び出した!
俺が見上げた4月の空は、どこまでも青く澄んでいた。
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