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SABURO 大ピンチ その4
『ドリンクを最優先でだすこと。グラスがあいたら「何かお持ちしますか?」 と声がけをする。テーブルはマメにチェックして。ドリンクをすすめて「もう結構です」と言われたら俺に教えてくれる?』
理さんの指令は、それがメインだった。でも、これがなかなかに大変。つねに気を配る必要があるし、ドリンクも作らなければならない。
「お取り分けいたしましょうか?」
「あ……はい、お願いします」
あっぷあっぷの僕と違い、理さんは運んだパスタや料理をテキパキとサービス中です。テーブルの上は整理されて、料理が一切れだけ残った皿なんかひとつもない。
「5番さん、ドリンクの追加ありません」
「じゃあ、デザートをきいて」
僕は言われるまま、デザートをおすすめしてオーダーをいただく。それを横目に理さんは待っているお客様に何か言っております。いつもよりお客さんが入っているのにスムーズです!いったい何が違うというのか?
それと、ミネさんと飯塚さんが結構な割合でテーブルに呼ばれています。よくわからないけど、理さんがいちいち「ハル」って名前を連呼する。(普段は正明なのにね?)ハルって呼ばれるのも新鮮だな~とニヤケてしまいました。
「ハル君ってハルのつく名前なの?」
3人で楽しそうに食事を楽しんでいる綺麗めのお姉さんたちに聞かれてびっくり。メニューの内容を聞かれることがあっても、僕個人に質問なんて初めてです。
「マサハルって名前なんです」
「それでスタッフさん達にハルって呼ばれているのね」
「そうなんです」(ホントはミネさんしか言わないけど)
「ハルくん、おすすめのアラビアータ、美味しかったわよ」
僕おすすめしてないけど??
お客さんが指さしたのは、理さん直筆のおすすめだ。ぬわんと、シェフ、オーナーと「ハルのおすすめ」なる文字が!気が付かなかった!(そんなこと言ってたかも、2品ずつ何とかこんとかって)
「ごちそうさまでした。また来るわね、その時もハルくんのおすすめ食べることにするわ。お会計お願いします」
うわ~なんだか嬉しいんですけど!もしや、ミネさんたちが呼ばれているのも、こういうことなのかな。やっぱり凄いよね、理さんって。
ここにずっと居たいな……大きく気持ちが傾いた僕でした。
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