「がっつり肉喰いたい、ハル行こうぜ～肉」 　ミネさんがそんなことを言いだした。肉食べるって遅いでしょ？「仕事あがり何時だと思ってるんですか！」という僕の反論は口をつままれて阻まれた。僕はアヒルではありません、断じて。肉が嫌いなわけではない。でもね、まもなく２３：００ですな時刻から肉ですかって事ですよ。 　で、結局ついていくことになったのですが、向かっているのはすすきの方向。遅い時間までやっているお店はやっぱり札駅や大通り界隈じゃありません。歓楽街すすきのです。 「４の４、５の４、ここはいっつも混むわけよ。近いからね、あまり待たずに食べたいなら６の４が一番」 　ミネさんが言っている数字は住所のことです。南４西４、南５西４の店じゃなく一番遠い南６西４にいきましょうねってこと。 　大学の友達に道外出身のヤツがいるけれど、碁盤の目になっている道はかえって迷うと言います。東西南北の感覚がわからねえ！って。「だからね札幌駅背中にすると後ろが北、正面が南、テレビ塔は東だよ」というこれ以上わかりやすい説明ないでしょ？な僕の回答にもダメだししてくる。テレビ塔みえない場所だったらどうすんだよ！って。この段になると面倒くさいので放置、自分で学習しろって事。 「焼肉ですか？」 「焼肉にはかわりないけどジンギスカン食おうぜ。なんか久しぶりにそんな気分」 「ジンギスカンですか」 　沖縄の人は飲んだ締めにステーキ食べたりしますけど、飲んでもいない２３：００にジンギスカン。いきなりの肉欲求？ミネさん発情でもしているのだろうか。そんなアホいことを考えていると目的地に到着。店から煙がでています。 「ラッキ～並びが外まで出てないね」 「ええ、行列しちゃう店ですか？」 「ええ？知らんの？来たことないの？」 「ないです、なんて店ですか？だるま？」 「ハル、君は非道民に決定だ。じゃあ入ろう」 　店内煙っています！油で木の床がツルツル滑ります！カウンター席のみで、炭台の上にはジンギスカン鍋が鎮座している。背もたれのない丸椅子がギュウギュウに並べられて座り心地は悪そう。 「お二人様～こちらどうぞ」 　言われるまま席につくとドリンクのオーダーをとられる。でもねメニューはなし、壁に貼ってある数少ない中からビールを選びました。肉をスルーできるサイドメニューはないかと壁メニューを見てもあるのはキムチ、チャンジャ、焼き野菜。むうぅぅ。 　そして問答無用！とばかりに巨大ビニール袋にむんずと手をつっこんだ店員さんがジンギスカン鍋に玉ねぎを投下！ぶつ切りのネギ投下！（店員さんはビニール手袋していました） 　白い脂身をてっぺんにボン。この溶けた脂身が焦げ付きを防ぎます。 「とりあえず３枚もらえるかな」 ミネさん、３枚って何？肉？皿？３皿も食べるの！ 「んじゃ、お疲れ～」 　ぷはぁ～ビール最高！ 「ビクビクするなって、３枚くらい楽勝よ。早い時間だと「上」と「ヒレ」があるけどね、オープンして１時間ぐらいでなくなる。この時間だと普通のしかないけど旨いことにはかわりなし」 「繁盛してるのですね」 「ハイ、超有名店でゴザイマス」 「はい、３枚ね」 　トントンと置かれた皿は、あれま！家にある小皿くらいです。そこに４～５枚肉がのってました。ビール園で出される丸肉じゃなくて、肉です！焼肉みたいに厚い肉。 「うし！焼くぞ」 　鍋のてっぺんに肉を４枚並べるとジュウっていい音がする。なんかだんだんテンションあがってきた！ 「ハル、タレどうする？こっちが唐辛子、こっちはおろしニンニク」 　大きなマグカップくらいのステンレスの入れ物に真っ赤な刻み唐辛子とニンニク。運ばれてきたタレに唐辛子をいれました。ミネさんは迷ったあげく、唐辛子と小さじ半分くらいのニンニクを入れた。明日仕事だしね、ぷはぁ～ってニンニクだと不味いですから色々と。