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つづき
「うし、焼けた!喰うべし!」
タレにくぐらせてパクリと口に放り込む。
「んんんん!!!」
うま!うますぎる、柔らかい、おまけにジンギスカン的クセがない。これはジンギスカン嫌いだって人にこそ食べてもらいたい!おもわず隣のミネさんの上腕部をボンボン叩いてしまいました。
「うまいだろ~~~~」
「驚きの味です!」
「これを知らないとは、非道民だって意味わかっただろ?でももう大丈夫、君は立派に道民です!」
肉がおいしいと野菜も美味しい。焼ける肉の油はジンギスカン鍋の溝を降りていって縁に溜まって行きます。そこにいるのは野菜君たち。肉の旨みで焼けた玉ねぎとネギ最高!
結局もう2枚と野菜の追加をしてしまいました。ビールも3杯飲んじゃった。
ヘタな焼肉屋にいくより断然いい、そしてリーズナブルっていうのがこれまたお得。ミネさんの奢りですが、罪悪感の少ないお代でした。
店の外の爽やかな秋の夜風を吸いこんだら自分が激しく臭いことに気が付いた。臭い!肉は全然臭くなかったのに煙はまさにジンギスカン。あのモクモクの中にいたのだから当然です。服も髪も全身すべてがジンギスカン!です。
「臭いです!うわあ、ファブりたいくらいです。コンビニに置いてませんよね」
「俺も臭いし、ハルも臭い。クサクサな二人でいいじゃないか。洗濯すればすむし。それよか電車はもうないよな。タクシーで帰るか?」
「なんか気持ちのいい夜だから歩いて帰ろうかなと思います」
「ハルのとこって飯塚の近くだよな」
「ですよ。電車通りですから」
ミネさんは携帯をとりだすとサクサクとタップしはじめた。なんだか嫌な予感……。
「悪いな、まだ起きてた?あのさ、ファブリーズ貸してくんない?あははは、いやさハルとだるま行ったのよ。そしたら臭い臭いって騒ぐわけよ、ハルが。ああ、ん?うんうん。にゃははは。わかったよ。了解したぜ!」
ほろ酔いというのでしょうか、僕もミネさんも「にゃははは~」なんて平気で言える程度には酔っておりますが、話の先が見えない僕はどうしたもんかと考えていました。お礼を言ってさっさと帰った方がいいですよね?そう思いますよね?
電話を切ったミネさんにタクシーにつっこまれて走りだす車。「お客さんジンギスカンですか、いいですね」なんて運転手さんに言われた。ヤッパリ臭いじゃん、僕たち!
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