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つづき

 買ってくださいと言ったところで、誰も買ってくれない。商品の価値を説き、生活に必要であるという付加価値をつけ、様々な提案を繰り返して契約につなげていく。それは相手によって様々だから、少しずつ情報を引出して適切なトークをぶつけていかなければならない。塚マネージャーはズバっと切り込むから気持ちがいい。コミニケーションをとって穏やかな空気と信頼感が生まれはじめるとサラっと聞く。 「それで、彼氏さんとはよく出かけるの?」  相手は一瞬ひきつるけれど、向かい合うマネージャーは当たり前のようにニコニコしているから毒気がぬかれるのだろう。ポツポツと自分達のことを話しだせば、ほぼ契約につながる。 「お財布の紐はどっちが握っているのかな?」 「……あ、俺です」 「そうなんだ。一緒に住んでどのくらい?」 「1年とちょっとです」 「いいねえ。ちなみに私は別居中」 「え?マジですか?結婚してたんですか」 「そ、一応ね。このままいくと「一応」すらなくなりそうだけど。あはははは」  といった具合にカップルやご夫婦と同じ対応をしながら、彼らと打ち解けていくから、見ている私も楽しい。客の見極めと伝達は私と塚マネージャーの「ゴールドライン」と呼ばれ、他の営業が羨ましがる。別に対応できるなら誰にでも任せるんだけどね、そういうわけにもいかない。  顧客になった彼らは展示会の度に会場に遊びに来てくれる。近況報告をしながら再度購入してくれる場合もある。購入しない時でも対応が必要なので、その際のおもてなしは私の役目。  持ってきてくれた写真を見せてもらったり、話を聞いているといつも思う。幸せの形は人それぞれで、同性だろうとなかろうと、日々を大切な人と送ることにこそ意味がある。  仕事におわれる毎日で出張にでてしまえばほったらかしになる自分のパートナーの事を考える切っ掛けになったりするから、彼らと話すことはとても大事。   今晩電話しようかな。

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