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september 28.2015 sanemi's KITCHEN 第一回

「今日はパスタの基本です。麺を茹でる、麺を知る」  第一回目のsanemi’s KITCHENの開催。本当に人がくるのかいな、と心配していたのに20人集まった。休みの半日が潰れるけれど、色々やることが店のプラスになると考えて始めることに。サトルの設定した初回の金額は3000円、その微妙なラインは何? 「月1で3000円。それ安くねえ?原材料もガス代もこっちもちよ?」そう言いました。 休み返上ですよ、こっちは。 「わかっているよ。要は3000円でペイできる内容にすればいいって事だよ。午前中のわずかな時間で給料日前のランチ1日分に少し足りないぐらいの売上が作れる。 原材料の安い食材で素敵な料理をつくることは皆共感できるはず。それがプロ提唱であれば節約料理とはいえないだろ?」 「そんなもん?」 「うん!そんなもん!」  サトルの自信マンマンはわけワカメだけど(あ~これオヤジギャグね)ま、ありかなって、それには共感。  うし!料理教室に通う私って何もしない女子より向上心あるよね~な気持ちをぶった切ってやりますか。いえ、違います。いい加減に省いていたところを正しい方向へ!の間違い。 <<いよいよスタート!!>> 「パスタ100gで水1L、塩10gみたいなことよく本や料理番組で言ってますけど、家庭の鍋にも色々あるし目安として捉えていいかな。茹で汁の塩加減は味見をして「お吸い物だとちょっとしょっぱ!」な程度だと覚えておいてください。塩いれたら絶対味見です」 『へえ~味見するんだ』そんな声が聞こえて来るけど俺にしたら、へえ~味見しないんだ、なんだけど。 「茹で時間は袋に表記されている時間マイナス1分。だいたいこれでアルデンテになります。ただし冷たいパスタの時は水でしめるので、この時は表示どおりの時間がおすすめ」  メモをとりながら見詰められるのって、恥ずかしいですね。 「麺は3種類用意しました。太さは同じで、細めのフェデリーニ。 メーカーによって麺も全然ちがいます。 表面がツルツルしているもの、ザラザラしているもの、色が付いているのは野菜がねりこんであります。 ちなみに店ではザラザラしているディチェコを使っています。ソースの絡みがいいし味もいい、色々な麺を試して好みを見つけるのも楽しいよ」  ママー結束パスタが不味いとはいわない。でも俺は表面ザラザラ派なわけよ、ソースの絡みが違うし、小麦の味とのバランスがいい。 「論より証拠ってことで、6皿用意しました。まず麺は表面ザラザラのタイプとツルツルのタイプ。AからCの皿の差は塩加減です。 ザラザラA~Cの3種類、ツルツルA~Cの3種類、合計6種類のお皿ですよ。 それぞれにかかっているのはエキストラバージンのオリーブオイルをガーリックオイルにしたものです。 じゃあ、みなさん。味わって食べてみてください。舌だけじゃなくて脳みそでも味わってね。食べて自分の記憶タンクに検索かける感じかな。頭使って味わってください。Cから順番に食べてみて」  美味しいね~って食べる時は頭まで使わなくていい。でも本気で味わう時は頭を使う。記憶にある味か、そうじゃないのか。感じる味覚は何種類あるのか。  味覚の種類は「塩味」「甘味」「苦味」「酸味」「辛味」の5種類が一般的だけど日本人はこれに「旨み」が備わっている。長らくイノシン酸やグルタミン酸を美味しいと感じてきたDNAだ。6皿のパスタからどんな味を感じてくれるかな、けっこう楽しみ。  6皿を食べ終わってメモしたり、驚いたり、会話をしている姿を眺めて、どうやら結論にいたったようだと腰をあげた。予想通りCの皿はモリっと残っております。 「皿の様子をみれば明らかだね。パスタを茹でる時の塩が大事だって気が付いてくれた?」  激しく上下する20人分の顔。さては塩いれないで茹でていた人、それなりの数がいたってことね。 「Bの皿だけど、Cを食べた後だと美味しく感じたでしょ?でもAの皿を食べたら、Bは不味いと思ったはず、どうですか?」  激しく上下する20人分の顔。そういうことなのよ、たかが塩、されど塩。 「答えは簡単。Aが適切な塩加減で茹でた麺。Bは中途半端、Cは塩なし。 じゃあね、別にすっごいことじゃなくていいから、気が付いたこと皆さん話してみてくれるかな、俺はそこが聞きたいので。右側の方から順番にいきましょうか。緊張しなくていいよ、雑談だからね」  右端にいた人が少しだけ息を吸い込んで吐き出す。ま、人の前で話すのってそれなりに固くなるよね、よくわかる。俺だってさっきから散々話しているけど、始まる時はちょっと緊張しちゃったし。 「塩を甘くみていました。入れればいいやって。ソースに塩味があるから必要ない、そんな考えが覆りました」  これまた頷く頭が何個もある。はい、どんどんいきましょう。 「あまり麺のことを考えていなかったからビックリしました。ザラザラとツルツルで味というか食感が違うんですね」 「単純に思ったのは適切な塩味で茹でれば、ガーリックオイルだけで一皿いけそうってことです」 「シンプルなソースで食べると、小麦の風味がするって初めて知りました。塩味の他に甘味を感じたのは小麦の味でしょうか。びっくりです」  20人の感想をまとめると概ねこんな感じになった。そうなのですよ。炊きたての美味しい米なら塩だけでドンブリ一杯いけます、ってのと同じ原理だ。  納豆かけようが、梅干しそえようが、ふりかけまぶそうが、白飯が不味かったら美味しくはならない。

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