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つづき

◇◆◇ そして中休み ◇◆◇  コーヒーを飲みながらポケラっとしている村崎にA4のクリアファイルを渡す。 「んん~なにこれ」 「理から」 「オーナー会員の件かな?……ぐへっ!」  秘孔でも突かれたのか?村崎は苦しそうな変な声をだし、右手はプルプル震えていた。テーブルの上に持っていたクリアファイルの中身がバサバサと広がり落ちていく。 「飯塚、ここにサトルの手書きメモがある。まずこれを読んでしまった俺はおののき、もものき、悶え死んだ」 「結論から言えよ、全然韻も踏んでいないし笑えない」 「じゃあ、読み上げま~す。ハルもトアも聞いておいてね。 『去年はあんなにいいオードブルができたのが12月になってからだった。もっと早くから露出していたら利益も違うし受注数も違う。だからさっそくテーブルスタンドとフライヤー、ポスターの掲示をしよう。今年の受注数の目標はクリスマス30、年末50』 はぁはぁはぁ、息が乱れるぐらいの数なんですけど!えと続きいくね。 『最近は仕事納めを会社でサクサクして終わらせる所も多い。飲み物や食べ物を調達して軽く終わらせる。 それで忘年会を兼ねてしまう会社もあるくらいだ。ということで、仕事納め用ご苦労さんオードブルも受け付けよう。オフィスや会社がたくさんある、この地域性を活かさないともったいない。 ということでトータル100個はかるく行けると思うので、皆で頑張ろう!それぞれ率先して動こう! 俺も有給に入ったら入り浸るから、何でも言ってくれ。料理は無理だけど。 宣材物OKだったらさっそくプリントアウト。もし訂正箇所があるなら衛に作業してもらって完成させて』 以上……わたしはこのままどこかににげだしたい……にげていいですかみなさん」 「ミネさんが故障寸前です!ミネさん!」  ハルにガクガク揺すぶられて、村崎はフラフラと立ち上がった。 「飯塚~サトルってどんだけ欲張りなの?いや違うな、ハードルガンガンあげてクリアを目指すって、どこのドMちゃん?」 「何を言う!理はドMじゃない!ドSでもない!優しい男だ!」 「本気で答えないで……どっちでもいいよ。ついでに飯塚がドMちゃんでもいんだけど。 ええとですね。俺は料理教室ってのを月1やるって仕事が増えてね、そしてクリスマスのランチとかディナーとか、なにより普通の営業もあるわけね。そんでヘロヘロな疲労MAXな年末にね、なんと100個ですよ?「YOU作っちゃいなよ!」なノリで作れるかっていうの!ぐおぉぉぉぉ」 「落ち着けって!村崎一人じゃない!俺だっている!一人で全部作れってわけじゃないだろ。俺にもっと頼れ。一人で抱える前に効率を考えればいいことだ。二人の分担をきちんと詰めて組み立てれば、出来ない数じゃない。俺だって、27~29日あたりの仕事納め用オードブルをぶち込むなんて聞いていなかったから、正直ビビッているけど、なんとかなる! いやなんとかしよう、な?」 「いいづかぁぁ~」 「ミネさん、僕だって手伝えることはあるはずです。高校生から一人暮らししていますから、少なくても理さんより厨房部隊の役にたてると思います!頑張りましょう、ね?」 「はるぅぅぅぅ~~~」 「料理はからっきしダメですけど、包んだり、箸そろえたりとか、お客様に引き渡し役とか、出来ることを探してやります。ミネさんの負担が少しでも減るように頑張ります!頑張りましょう、ね?」 「とぁぁぁぁぁぁああああああああ~」 「くそ~くそ~鼻くそ~~やってやるよ!12月は俺がドMちゃん宣言しちゃうからな。鞭で叩かれようが蝋燭で火傷しようが耐えて見せます、実巳君!」  ぶっ壊れ度はタガが外れてガタガタ状態だ。まあ、やるしかない。スタッフが増えたということは生産性をあげなくては喰っていかれない。 「スタバいってキャラメルマキアートの一番でっかいの飲んでくる!」 「……いってらっしゃい」←俺、北川、トア 「♪ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、ダ~ダ~ダ、ディダダダダ、」  ダースベイダーに変身した村崎は歌いながら店を出て行った。「道では歌うなよ」俺を含め全員そう思っただろう。グダグダ悪あがきするくせに、腹を括ったら誰よりもやる気をだす、それが村崎だ。  ダースベイダーから正気に戻っていれば……の話しだけどな。 ………………………… 10月になったとたん、師匠が厳しくなったり落ち込んだり、ため息ついたりという年末鬱に突入しておりました。なんとかなりますよ、そんな考えしかなかった私。 12月の宴会炸裂&お節の仕込みが過酷。29日からは営業せず朝6:00くらいから本格的にお節の準備。31日の引渡しは早いお客さんで7:30頃くるのです! ええ、朝の7:30! 30日は20:00頃からお節の盛り付けを始めるのですが、全部終わるの朝の6:00過ぎです(笑うしかない) 後片付けしつつ引渡しをして、年明けの営業に必要な食材を買い出しに行ったりなんだり。店を出るのはだいたい14:00頃でした。 帰ったら泥のように眠る。目が覚めたらもう元旦。そして4日から営業するため3日には仕込み出勤。 翌年からは師匠と仲良く「10月きちゃいましたね」「やっとよ……」と二人でドロ~~ンとしておりました。 子供のころ一番好きだった12月は今一番嫌いな月ですww

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