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つづき
「ミネは頑張っているって言ってたよ」
「なにそれ。恐山のイタコ技まで持ってるわけ?サトルは」
「そんな技なんかないよ。言われたのは、もっとミネのケツを叩けって」
「えええ~~まだ叩くわけ?」
「そ、スパンキング王の名称をもらったの俺」
ブッ!とミネが吹き出した。
「なんかそのネーミングセンス、他人の気がしない」
「だから、身内でしょうが」
「そっか、来年は俺も逢えるかもしれないな。来年じゃなくてもいつか逢えたらいいな」
「そうだね」
「そうかケツ叩けか。ってことはさ、俺はまだまだ足りないってことだ、そして伸びしろがあるって事だよね。そう考えたら頑張るのも悪くないって思うよ。サトルに苛められても意味があると思えば耐えられる」
「いいこと言ってるのか、ふざけてんのかわかんないよ、それ」
確かにそうだ。自分で限界点を定めた時点で人の成長は止まる。まだ行ける、とハッパをかけられて先に見える物を目指す。たとえ自分には見えていなくても、見えた!と誰かが言えば其処に存在する何かに辿りつけるだろう。
人は一人で何かを成し遂げる事は難しい。何より自分に一番甘いのが自分だからだ。そんな所で止まってないで、いくぞ!そう言って手をひっぱってくれる誰かがいてこそ、先に進める。
「誰かに手を引かれて、ケツを叩かれて。時には自分が誰かの手を引き、ケツを叩く。
それを真剣に出来るのが仲間なのかもしれないな」
「そうだな。去年の今頃はまだ俺はサトルに逢っていなかった。あのオードブルから今日までの時間の密度はすごいものがあるって、よく考える。オヤジが居なくなってキリキリ舞しながら、とにかく毎日を始めて終えることをしていた時間ってさ、何か覚えていることがあるかって言われるとあんまりないわけ。
ただただオーダーをこなしていたっていう感覚は残っているけど。
そして飯塚が来るようになって、色々教えるようになった。それからだよ、周りが見えるようになったり、このままじゃじり貧だっていう危機感持ったのは。
やっぱり一人でいると、先細りするっていうか妥協が多くなる気がする。
それを考えたら、今のスタッフは最高の人材だよな。それぞれに得意分野があって、目的が一緒で」
自分の働きで利益をだす、これはサラリーマンでも同じだ。同じ部署の同僚とともに数字達成を目指すが、そこにあるモチベーションは自分の数字をクリアする達成感だ。でもこの数字による利益は会社の利益であって、俺個人の利益ではない。会社の目指す目的と、歯車である社員の目的にはズレがある。社長と社員が同じ思考回路と目的で働いているわけではない。
ああ、そうか、この差なんだと、ようやく納得した。
ここに来ると意欲が沸いてくるのは何故だろうと、いつも考えていた。SABUROで働くスタッフは同僚ではなく「仲間」で、目的が同じだからだ。それぞれが縒り合さることで一本の太い糸になっているからだ。
「俺、ここに来れてよかった。毎日が楽しくなるだろうし、これからも色々な壁を越えていくことになるだろうけど、一人で壁に爪をたててよじ登るわけじゃない」
「そうだね。皆で肩車すれば越えられるよ。一番上はハルだな」
「また、そんなこと言ってるし」
「よろしくお願いしますよ、スパンキング王さん」
ミネは笑いながらコーヒーのお替りを注ぐために立ち上がった。やっぱりミネの笑顔は最高だ。その笑顔が曇るぐらい、ケツを叩いてやるよ。貪欲に先を目指そう、皆で。
う~~ん、俺はもしかしたら実巳派なのかな?(衛には内緒だよ!)
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