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octber 16.2015 嬉しい二人
「サラリーマンも残りわずかだな。大丈夫か?渡辺と石川は」
のんびりな会話だが俺達は速足で歩いていた。最終の電車に乗るには急ぐ必要があり、逃せば徒歩で帰ることになる。 夏はいい。冬があけたと浮かれた春なら尚更いい。名残惜しいと寄り添う秋もいい。しかし、もう初冬という言葉がチラホラするこの時期に徒歩は勘弁だ。いいはずがない。
「統合を知ったら何て言うかな。大丈夫だと思いたい」
「一抜けってのは罪悪感があるよな」
衛の言う罪悪感はよくわかる。俺だけが自分の意志のままに進んでいくことに対しての罪悪感。 無責任という単語がチラチラするこの現状、悪いのは俺なのか?なんて考えてしまう。
「会社は理を失い不利益を被るかもしれないが、そんなもの人事で人員を見つければいいだろ」
「あまりに冷たいな」
「そんなことはない。私情を排除したら残るのはシステムだ。どんなに会社に心を砕いたとしても、自分の替りはどうにでもなる。現に俺が抜けたって変わらず会社は動いている」
衛の合理的でドライな仕事に対してのスタンスを思い出した。やや情に流れがちの俺に呆れて「違うだろう」と言うのは衛の役目。いつも「ああ……だな」と答えて一息つく。そうやって同じ場所で働いていたことを思い出した。
「衛は少し変わったかもな」
「なにが?」
「うわ、やば!電車来た!」
俺達は急ぎ足をやめて同時に走りだす。とりあえず会話はお終い。今の最優先は電車に乗り込むこと!
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