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つづき
「フフフフ」
いきなり充さんが笑ったから何事かと思う。別に笑える話をしていたわけでもないのに。
「なんですか、気持ちの悪い」
「いや~思いだし笑い。聞きたい?」
「俺がネタなら聞きたくありません」
「いやいや、武本じゃないよ。西山」
「じゃあ、聞きます」
聞きますといわなければ解放されない。言いたくて仕方がないって顔をしている相手を無下にすると解決が長引くだけだ。
「もう閉店しちゃったんだけど、狸小路9丁目に「しろくま堂書店」っていう本屋があったの武本知ってる?」
「初耳です。あんな外れに本屋ですか?しろくま?絵本の専門店ですか?」
充さんが「ぶっ!」と噴きだした。あのですね、話の方向がさっぱりわからないわけです。
意味もなく笑われたりは心外だ。「しろくま」なんて言われれば絵本とか、かわいいものが置いてあるかと思いますよ、普通は。
「絵本はなかった。でも雑誌や文庫本を置いていたぞ」
「本屋なら当たりまえですよ」
「しか~~し。ここはただの本屋ではなかったのだ。文庫本や雑誌は本屋のフリをするための商品であって、この本屋の主軸商品は別にあった」
「なんですか、もう。もったいぶるならそろそろ仕事始めないといけないので、帰ってください」
「悪い悪い、いやそこはな、ゲイビとゲイ書籍が主軸の本屋。当時ゲイビ買うったら通販か「しろくま」しかなかった」
何を言い出す、このオッサン!ゲイビとゲイ本の店?しらないけど「薔薇族」とかああいう雑誌?ゲイ満載の本が満載の店?
「俺が西山の上司の石田さんと打ち合わせしていてな、西山も同席してたのさ。それで内容を詰めるために資料が必要になって、雑誌を買いにいかなくちゃいけなかった。
そりゃあ一番ペーペーの西山が「私買に行きます!」と宣言する。そこで俺が言ったのが「それ系の雑誌なら9丁目のしろくま堂書店がいい。ビルの地下にあるからひとっ走り行ってくれ」
そんで西山がミーティングルームから出た途端、俺と石田さん大笑いよ!」
うわ、ひっで~~そりゃあひっで~~
「ゲイな人たちが店内にもいたし、近場の駐車場に停めるときはナンパに気を付けろ、なんて言われてたくらいだからな。でも西山は女だし、普通の雑誌買に来た客だ。問題はない!」
そういう問題か!
「それで西山さんは?」
「無事帰還したよ。おつかいの雑誌もちゃんと買ってきた。でもな、変な顔してるわけ。自分の考えをいっていいものかどうなのかって顔。
その顔見てたら、俺と石田さん我慢できなくなって大爆笑よ。
西山は顔真っ赤にして怒ってな。いやあ、ああいうイタズラができなくなってつまんないよ最近」
俺は天を仰ぎましたよ。その本屋、もしまだ営業していたら絶対新入社員はそこに行かされたはずだ。女子社員は笑い話で終わるかもしれないが男子社員だとしたら……考えるだけでも恐ろしい。その本屋がなくなっていることに心底安堵した。
そして俺が何を考えたかといいますと。
そういう雑誌やAVに何の魅力も感じていないし、男の裸を見たいとも思わないってこと。それはつまり……俺の場合「衛」限定なんだってこと!(うきゃっ!はずかしっ!)
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余談ですが
この本屋さん札幌市に本当にあったのです
そしてこんなイタズラしていたオジサンにも心当たりがありますw
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