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november.8.2015  誕生日に慌てる3人

「おはようございます!」 「おはよ~ハル」  ハルは持ってきた紙袋をバックヤードの隅っこに隠すように置くのを見て、それはナンデスカ?と聞くのが俺でしょう。ということでもちろん問い詰める。 「 ハル、何を隠したのかな?」 「……いえその、たいしたものじゃないのです」 「たいしたものではないのであれば、余計に言っちゃっても問題ないってことだよね?」  ハルは、あ~あ、こんなことならトートか何かにいれて見えなくすればよかった。そう思っているに違いない顔だ。でもね、コソコソしているのはあまりよくないことよね。だからハルの真意を聞かねばなるまい。 「あれは、理さんと飯塚さんの誕生日プレゼントなんです」  あ……あ……そういや11月だっけか、そうだよね、もうとっくに11月で、俺ってばすっかり忘れてしまっていた。ついでに言うと自分の誕生日もたまに忘れる。いや、忘却の彼方とかそういうことじゃなくて、朝に「あ、誕生日だ。今日は飲みにいちゃおうかな」なんて考えるのに、普通に家に帰ってきて缶ビール飲んでから「あっ」って気が付くみたいな?  そういや、SABUROの面々の誕生日ちゃんと皆で言いあったことがない。なんせ面接ってものがなかったから履歴書を見たわけでもないし、「誕生日っていつ?」なんて聞くこともなかった。あらららら。 「もしかしてミネさん忘れてました?」 「11月は知っているけど何日が誕生日かちゃんと知らなかったりする」 「そういえば、僕ミネさんの誕生日知らないですもん」 「だよな」 「何月何日ですか?」 「あ~ゴミの日」 「は?燃えないゴミの日?不燃のゴミの日?おい、どのゴミの日だ、いいやがれ~とか、そういう返事を求めてますか?」  求めてません。ちょっとしたダジャレだったんですが、その種明かしって恥ずかしいんだぞ。 「5月3日なの!」  ハルのも~~んすごい呆れ顔を見て、うわ、これがオヤジギャグが滑った時の気分なのだろうかと実感。でも「ゴミの日」はオヤジギャグではないですよ。ですよね? 「んでハルは?」 「8月2日です」 「トアの知ってる?」 「知らない……です。聞いたことなかった!聞かれたこともなかった!」 「これはSABUROの仲良し状態には問題な出来事だな」 「ですね」 「それで、誕生日プレゼントを見つからないように隠していたわけか」 「理さんは8日で飯塚さんは18日の10日違いなので、今日渡してしまおうかと。たぶん明日は朝から飲むと思うのですよ、あの二人なら」 「だろうな。素っ裸で飲んでるかもしれんな」 「ミネさん!」 「一応今の冗談だからな。俺がこんなこと言ってたとか言うのナシだぞ。鉄仮面にめっちゃ怒られそう。理の裸を想像したのか?とか意味不明な難癖をつけられそうだ」 「つけられますよ。絶対です!」 「なるほど、それで牛テールなんか発注したわけか」 「それ絶対理さんがオネダリしたんですよ。「衛、俺牛テールが食いたい」「そうかそうか。とびきり旨いの作るからな」とか言ったりしちゃったりですよ。なんだかなあ~」 「それ当たっているよ、絶対。んでハルは誕生日なにしてたのよ」 「何って、ここで働いて帰りました。普通にビールのんで。親や友達からメールがきていたので返信したかな」 「うわ~言ってくれりゃあ、乾杯しにいくか何か作ってやったのにな。ごめんよ~ハル」 「そんなこといいですって!僕だって5月何も知らなかったし!ミネさんは誰かにお祝いしてもらいましたか?」 「いや……缶ビール飲んで寝たと思う」 (作者が勝手にファーストシーズン終わらせたから谷間だったのよね5月) 「よしハル、指切りだ!来年はちゃんと5月と8月のお祝いをしよう。そんでトアが来たらトアの誕生日聞いて、その日付も加えよう」 「ですね」 「ほれ、小指だせ」  なんだか照れくさそうに可愛くふくれたハルと指切りゲンマンをした。何十年ぶりかっていう指切りだったけど、来年の約束事があるってなんかいいよね。 「ところで何買ったの?」 「うすはりです。箱に入っている、ちょっと素敵さんです」 「なっ!うすうす箱買い??!!」 「だから『う・す・は・り』ですってば!だれがゴムを箱でプレゼントしますか!そんなこと理さんにしたら一生口きいてもらえません!そうしたら僕はここを辞めなくちゃならなくなってミネさんだって困るでしょう?僕も困ります!就職もなくなって住む部屋も失って路頭に迷います!」 「いや……冗談だから」 「シャレになりませんって」  なんだかこういうの楽しいよねって実感しちゃった。太郎と仲が悪かったわけじゃなかったし、色々話だってしたしメシ食いにもいったけど、今とは違う。人数の違いかな?やっぱり個人の個性の違いかな。  誕生日でこれだけ盛り上がれるって、やっぱり俺達は仲良しだなと、そんなことがちょっと嬉しかったりする。俺としてもサトルと鉄仮面に何かプレゼントしなくてはなるまい。ぜんぜん思いつかないけど。 「おはようございます!」  お、トアが出現!とっくに来ているはずの鉄仮面&理はまだ来ていない。遅刻じゃないけどね。変な顔して出勤してきたらイジリ倒してやろう。でも理はいつも以上にキリっとしてくるだろうから俺はつっこめなさそう。 「トアの誕生日聞くぞ、ハル」 「はい!」  ということで聞いたら誕生日は3月14日だった。色々といたたまれない日付だそうで、どうせなら2月14日にしてほしかったらしい。だよね、自分の誕生日に義理チョコのお返しを買わなくちゃいけないのって、ちょっと不条理っぽい。トアらしいけど。  鉄仮面&サトルの誕生日だってことを伝えると、トアは大慌てになった。自分だけ何も用意していないと思われ!なんていうから、実は俺もなのよ~と白状しました。 「ミネさん、もうこうなったら連名でプレゼントにしましょう。エノテカにマグナムボトルのワインが売っています。1500mlのデカボトルです。これを2本ばかりどうでしょうか。アイディアのなさはブツの重さでカバーです!中休みに札駅いって買ってきます」  俺はもちろんその案にのった。ハルのうすう……ちがった「うすはり」とぴったりだし抜群だと思ったから。いいプレゼントだと思ったんだけどね、後日こっそりハルがおしえてくれた。 「理さん、誕生日に6本入りワインの箱、3箱も買ったらしいです」  やっぱりね、そうだよね。でも腐る前に、やつらなら飲み干すだろう、だから問題なし!  正直に言うと、俺は来年のゴミの日が楽しみでしょうがなかったりする。 お祝いしてくれることが確定しているって、いいことがちゃんと来年も待っているってことだ。これって、やっぱり嬉しいなって。  なんか、俺、最近幸せだな~~!

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