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12年……重ねた時間の目指す先 1
まぶしい……カーテン開けっ放しで寝たのか。
ベッド脇のサイドテーブルがわりに置いてあるチェストの上に手さぐりで手をのばす。指先に触れたスマホを握り画面をみれば、まだ8:00すぎだった。
せっかくの日曜だというのに無駄に早起きをしてしまった。むっくり起き上がると布団の中に冷たい空気が入ったせいで丸くなる男を見下ろす。
色っぽい朝とは程遠い。ベッドは一つしかないし、予備の布団がないから酔い潰れたギイをベッドに転がし横にもぐりこんだだけだ。
俺達はいつからちゃんと名前を呼び合わなくなったのだろう。
俺は儀 からギイへ、ギイはヒロからマスターへ。俺の店に来るようになってからだろう。
節操ナシという看板を背負っているような男だ。店の客と寝まくるに違いないから「ほどほどにしておけよ」と釘をさした時に言われた。
「古い付き合いだとバレたら、ヒロに迷惑がかかる。あくまでも店の客と店主ってことにしておこう。
だからお前はギイと俺を呼べばいいし、俺は他の客と同じくマスターって呼ぶよ」
ギイの言う迷惑は本質をはき違えている気もしたが、この男に色事で何を言ったところで無駄だから黙ってうなずいた。
やりたいようにやるくせに、あまり憎まれない。それがギイという男の欠点であり魅力でもある。
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