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12年……重ねた時間の目指す先 2
俺達の出逢いは17歳の頃だ。自分のセクシャリティが明らかにおかしいと自覚してからそれなりの年月を重ねたあとだったから実際の世界を覗いてみたかった。
クラスメイトとの飲み会の帰り、自分と同じような男達が集まると言われている店に行った。雑居ビルの階段に腰かけながら、店に出入りする男達を眺めていると安心したことを覚えている。自分だけではない――その現実は有難かった。
そしてやってきたのがギイだ。店に入る前に階段に座っている俺に気が付いて少しの間みつめた後、ふわりと笑った。
「はいんないの?」
「うん、いいよ。もう帰るし」
ギイは店のドアを開けるかわりに俺の隣に腰かけた。
「入ってみてから好きか嫌いか決めればいいよ。居心地が悪ければ帰ればいいだけだ。ここに座っているよりずっと簡単に答えが出る」
確かに……。
俺の腕をとって立ち上がらせると「行こうぜ」と言い歩き出したから、俺はそのままついていった。
そしてその場所は俺にとっての拠り所になった。普段はマイノリティーであっても、ここにくれば自分達こそがノーマルに成り得た。その感覚は疾しさや焦りと不安を消してくれたし、そこにある出逢いを楽しんだ。SEXを覚え、人肌の温かさを知った。
自分の店を持つ。明確な目標ができたのはよかったのだろう。特に勉強したいこともなかったし、地下鉄に乗って通勤するサラリーマンをする自分の姿はあまりに漠然としていた。
自分が救われたように、居場所を探している男達が安心できる場所を作る。その使命感にも似た決意は進学を辞め飲食業界に足を踏み入れることに繋がった。
ギイは大学に進んだが、俺達の友情は継続された。妙にウマが合ったし、互いにゲイだという気軽さがあった。嘘をつく必要がないというのは気持ちがとても楽になる。
親友とよべる関係を築きながら、重ねてきた年月。今年でそれは干支を一周することになり、それなりの長さになった。
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