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12年……重ねた時間の目指す先 4

寝顔だけみていれば素直な男にしか見えないのに。その詐欺みたいな顔を見下せば出るのはため息。 最近ギイはすぐに潰れるから何か悩み事でもあるのかと気になっていた。思いつめたり、酒で何かを紛らわせようとしたとき程、アルコールに呑まれるものだ。 かすれ始めているとはいえ、ギイの魅力は健在だし人を惹きつけるには充分。歳をとって見た目が衰えていると考えているようだが、それは違う。 場を楽しみ、覇気に溢れていた姿が変わったのだ。漲るような自信を隠そうともしない、それがギイという男の裏打ちであり、散々な結果になるとわかっているのに口説かれる男が後を絶たない理由だった。 半年くらい前からだろうか、ギイから少しずつ消えていく何か。 仕事はきちんとする男だから、それなりのポジションを任されながら仕事をしている。忙しくなると店に顔を出すことができない、そんな月もある。 「俺はこのまま生きて何歳になったら幸せになるのかな。それとももう幸せを喰い潰してしまった後で、これ以上は無い。そんな人生なんだろうか」 昨日独り言のように呟いた言葉に、俺は返事をすることができなかった。将来を憂う、そんなことが一番似合わない男だったはずだ。どういう心境の変化だ?俺はそれを言葉にできなかった。言ったところでどうしようもない。 「相思相愛の恋人を作れば何かが変わるかもしれないぞ」 俺が言ったのは救いにもならない言葉で、ギイ自身が気付いていることを上塗りする結果になっただろう。 自信に溢れているがギイは小心者で臆病だ。誰かの手を掴んで心を砕いたあと、それが離された時に自分がどうなってしまうのか。それを思うと誰の手もいらないと考えてしまうのがギイだ。取り上げられるくらいなら、自分のものにしなければいい。 そうやって意味のない関わりを重ね、相手の心を見て視ぬふりをする。相手に惹かれる前に逃げ出すことを繰り返して関係を持った男の数だけが増す。 男の数は自分の臆病さを自覚した数に比例するから、ギイの中に溜まり続ける自分の弱さに雁字搦めになっている。30歳という年齢を迎え、その心のうちから目を逸らせなくなったのかもしれない。 何かから逃げるようにして飲む酒に主導権を握られ、カウンターに突っ伏して閉店を迎える。だから最近ギイの周りに男達はこない。 遊ぶ相手と定めるには、最近のギイは弱すぎる。

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