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12年……重ねた時間の目指す先 5

コーヒーを淹れるためにベッドを抜け出した。朝だよと起こすことに意味はない、寝たいだけ寝ればいい。目覚めて一人ではなく誰かが居る。そんな朝を迎えればいい。ただ3日も続けてこの状態だということが気に入らないし心配だ。 相変わらず水と酒しか入っていない冷蔵庫の中身を確認してコーヒーをセットした。トーストを食べるにしてもパンがなかった。卵もない。これといって料理ができないから出来上がったものを買うか、食べに行くしかない。 この二択しかない生活を変えるべきだろう。ただでさえ太陽を浴びる時間が少ない生活は身体に負担をかけているに違いないのだから。玉子とヨーグルトくらいは酒を買うついでに買い物カゴにいれよう、そう決めた。 コーヒーのいい香りがただよい始めたからシャワーを浴びる。煙草の煙、アルコールのすえた匂い。それを洗い流さなければ新しい一日を迎えることはできない。 リビングにもどるとギイは膝を抱えてソファの上にいた。 「おはよう」 「ん……おはよう。俺また迷惑かけたんだな」 「迷惑っていうか、潰れてるからさ。店に放置しておくわけにもいかないだろう?ってこの3日間、俺は毎朝同じこと言ってるよ?」 「そうだな。潰れたわりには頭も痛くないしムカムカもしていない」 「当たり前だろ。ビール1杯とスミノフのロック2杯だ。そんな程度で二日酔いになるかよ」 「肝臓が弱ってるのかな」 弱っているのはお前の心だよ。俺はそれを言葉にしない。弱っていると人に見透かされていると気付いたら、この男はショックを受けて今以上に弱るだけだ。俺の甘やかしも大概だな。このドMが。 「何か可笑しいことでもあったか?」 「なにが?」 「変な顔で笑ってるから」 ドMだと自分を笑ったんだ、そう言ったら、お前は何て返事をするだろう。 「別に何もないさ。シャワー浴びてこいよ。着替えはこの間置いていったのを洗濯しておいた。下着は新品だから安心しろ、安物だけどな」 「いつも悪いな。お前が友達じゃなくなったら、俺かなり凹む」 「お前の暴挙を見ても友達なのは俺くらいだろ?安心しろ、そんなことにはならない」 ギイはポンポンと俺の肩を2度ほどたたいてギュっと握り、ふわっと笑みを浮かべて背を向けた。 俺の心臓がキュウと捩れた。

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