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12年……重ねた時間の目指す先 10
「沢山の男とたっぷりの時間を過ごしてきた。そこに沢山の感情がまぎれていたが、お前は見て視ない振りをした。伸ばされる手だけを見て、相手の心を覗くことをしなかった。
それは一度手にしたあとに消えてしまったら耐えられないと知っていたからだ。
お前は自信に溢れているが、裏腹に臆病で小心者だったりする。
自分を守るために必要以上に人と関わらずに身体だけを重ねた結果だよ。
満たされてないんだ、俺達は。身体の話じゃない、心が寂しがっている。違うか?」
さらに一口ワインを飲み下す。ようやく視線を俺にむけたギイは笑っていた。
「時にお前は辛辣で手厳しい。俺にそれだけ冷たくできる男は他にいないよ」
「わかっていないな。俺は優しくしているんだ」
「わかっているよ、俺にそこまで言ってくれるのはお前しかいない」
わかっていればいい。さてどうしたものか。弱ったところにつけ込むか?今日はとりあえず見合わせるか?
いや駄目だ。俺は変わると決めたのだから、今日はちゃんとやり遂げよう。そうじゃないとこれからも意味のない日々を送ることになる。
「誰も傍にいないから、そうなるんだよ。引きあげてくれる誰かがギイにはいない。
きっとキイちゃんだって沢山の悩みや不安、問題を抱えて生きているはずだ。店に顔をださなくなって1年近くがたつけど、翳りはなくなってキラキラしている。きっと彼の言う出逢いがそうさせたんだ。
王子様達がキイちゃんに前をみて進む術を教えて見守っているんだろう。
ギイにもまがりなりに、いつも誰かが傍にいた。でも心に寄り添ってくれる男がいないことに気が付いて孤独を実感したんじゃないか?
ちゃんと誰かを好きになれ。一緒にいたいと思える男を探すんだ」
「今更真面目な恋愛ができるのか?俺が?」
「恋愛しようとして恋愛するバカがいるか。自分が望む相手を見つけろ」
「偉そうにな~お前だって同じだろう。それとも内緒の恋人説、あれマジなのかな?」
ふう……深呼吸を一つ、そして残ったワインを一気に飲み干した。財布から1万円札をとりだしグラスの下に置く。
「この残り飲んでしまうから、ちょっと待てよ」
「いや、ゆっくりしておけ。儀 」
『儀』と呼ばれたことに面食らったのか、びっくりした顔がこっちを見ている。俺は次の言葉を継ぐためにギュウと拳を握った。
お前との仲もこれまでか……。
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