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つづき
「そういうところが俊己に似ているよ」
伯父さんの事を思い出す時、いつもこんな顔をする。どこか遠くを見るようで何も見えないことを寂しがっているようなね。見ているほうが切なくなるような、なんとも言えない感じになる。
「伯父さんって、どんな人だったの?オヤジはあんまり聞かせてくれないんだよね。生きていたら実巳をかわいがっただろうなって言うくらいでさ」
「だろうな、可愛がっただろうな。似ている所は自分で決めてそこに真っ直ぐ進むことだ。迷いがなく優先順位が揺るがない。実巳は三郎の跡を継ぐことを随分早くに決めて、それを目標にずっと頑張ってきただろう?
俊巳もそうだったよ。大学が疎かになるのは本末転倒だが、3人で店を持つことに意欲的だった。実現していたら、こことはまた違う場所になったかもしれないが……」
「しれないが?」
おじさんはニヤっと笑ってビールを一口。
「結局実巳は、俺達の店を継ぐって言ったに違いないだろって思ってな。俺は一人、3人の夢から離れた場所に逃げるように進んだ。でも結局は離れることができずに、グズグズとへばりついている。
三郎が「次は高さんの番ですよ」って言ってくれて、嬉しかったし居場所をもらえた気がした。
でも実巳は違うだろう?俊巳が生きていても、いなくてもこの店を居場所にしただろうってこと。俺はそれが嬉しい反面、羨ましくもある」
ハル父と何かを企てていたり、サトルとコソコソ話をしているキレキレで腹グロな魔道士の顔はここにはない。純粋にそう思っていて、オヤジや伯父さんとのことを想いだして、俺の存在を認めていてくれる。とっても優しい笑顔だ。
「伯父さんに逢いたいな。いつか逢えるかな」
「普通に考えれば死んだら逢えるんじゃないのか?」
「いや~それが、サトルは逢ったって!命日に!」
「ブゴォ!ふごぉ!!ごほ、ゴホ!」
「どうしたの?変なところにビール入っちゃった?」
しばし咽たあと、息をゼイゼイしながら顔を真っ赤にしているのが可愛い。でもなんで?俺変なこと言ってないよね?
(もしかして!あなた知ってますね?おじさんが咽た理由!)
「失礼」
「ぶっ!」
今度は俺が噴出した!なにが「失礼」だよ。急にビジネスマンになられても困るよ、マジで。
「それで武本は何て?」
「俺のケツをビシビシ叩いていいからって。スパンキング王に命名とか。もう少し愛する甥には温かい言葉を期待してたのに。サトルには化けてでて俺を無視って、どういうこと?」
「んん……まあ……わからん」
「なんか盛大に歯切れ悪いね?なんか知ってるの?」
「知っているというか、知らないというか」
「なによ~なんだっていうの?言わないなら最初から言うな!っておじさんのセリフじゃん」
残ったビールを一気に呷り、しゃーないなって顔をしながら不本意なのがありありな声。
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