「こんどの月曜、髪を切にいかないか？」 　お疲れさま乾杯をしてマッタリ中に衛に切り出した。答えを自分なりにだしたから、足が遠のいていた実家に帰ることができそうだ。温泉行きを急に決めちゃって正明との約束もずっと延長中だし。さすがに来週にかかると呑気に散髪は無理だろうから、行けるとしたら７日が最後のチャンスだ。 「そうだな。これを逃すと厳しいかもしれない。北川との予定変更したままだしな」 「だよね。どうする？バスで帰る？」 「往復だと一人５０００円を少し切るぐらいだよな。レンタカーの方が安くないかな、ちょっと調べてみる」 　衛はスマホでサクサク検索をはじめた。温泉の時もレンタカーだったけど、あの日は２４時間で借りたから、それより短い単位の金額がわからない。でもバスよりは絶対安そう。 「アクア。１２時間で７０００円台で借りられる。ガソリンだって僅かなものだし、こっちのほうがいいな」 「正明の分を足して二人で割ってもバスで行くより断然安いね」 「北川のことだ、僕自分の分は払います！って言い張るだろう」 「その時はガソリン代だけ払ってもらえばいいよ」 「そうしよう。明日北川に言うとするか。予定入ってないといいが」 　のびのびになっていた散髪か。姉ちゃんのお腹はデカクなってオタオタしているだろうか？笑わないように注意しないと、がっつり怒られそう。気をつけなくちゃ。 「話はかわるけど。理は欲しいものある？」 「なんだよ、唐突だな～。こないだ誕生日したばっかりだぞ？」 衛は空いたグラスにワインを注いでこっちを見る。 「クリスマスがあるだろうが」 　ああ、クリスマスね。そういえばクリスマスを衛としたことはない。週末行き来をしていた頃、クリスマス一緒に飯食おうぜという流れにはならなかった。お互いに避けてきた気がするし、飲み会続きで疲れていた。 　去年は初オードブルでそれどころじゃなかったし。 「そういえば、俺達クリスマスしたことなかったな」 「だろ？」 　だろ？って、その顔はやめてください。もう少しさらっと見るとか、無表情とか、やり方を変えてくれないでしょうか。特にソファで隣にいるときには！ 「でもさ、クリスマスの頃はヘロヘロだと思うけど」 「……だな」 「クリスマス２３日～２５日の３日間だろ？ランチやディナー、それに加えてオードブルがあるし、正明のBOXもある。３日間を乗り切ることを考えたらクリスマス～～なんて浮かれている余裕はないよな、残念だけど」 　衛はポスンと背中をソファに預けた。クリスマスに欲しい物あるか聞いてみるか。そんな思いつき程度だったはず。でもよくよく考えてみれば密度の高い３日間でクリスマスどころではないことに思い当たったらしい。