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つづき

「帰ってきて寝て、朝早く行って働いての3日間になるな」 「とくにチーム厨房はその確率が相当高い」 「ああ」 「それに欲しい物ってないよ、思い浮かばない。誕生日したばっかりだし。最近不思議に思うんだよね」 「何を?」  衛は何たることだ、背もたれからコテンと転がり俺の足に頭をのせた。もう不意打ちは止めてくれませんか! 「なんだよ!なんの断りもなく!」 「膝枕お願いいたします、って事前に言えってか。断るだろう、だからお願いする気はない」  むっき~~この俺様め! 「それで?何が不思議?」 「会社勤めしてた頃ってネクタイ何本あっても足りない気がしたし、スーツやシャツだって欲しかった。それを言ったら時計やカバンも同じ。それに私服があるだろう?飲みにも行ったし、昼飯は外。今の給料だったらあきらかに足りないよな」 「それはそうだ。理は俺と違って家賃もあったし」 「そうそう。だから貯金は微々たる金額しかできなかったのに11月は預金ができたんだ。家賃の軽減は大きいし、光熱費やモロモロ折半になっているからそれも大きい。来月はSABUROの初給料だけど、その額でも貯金できそうなんだよね。 で、一番大きいのは物欲がなくなったこと」  衛は仰向けに姿勢を変えて、お腹の所で指を組んだ。ソファの肘かけに長い脚を乗っけている。下から見上げられるのはあんまり好きじゃない。下からみると顎と首の境目が不細工だと思うんだよね、思いません?不自然だけど顎をグイとあげてみた。いくらかマシだろう。 「物欲は確かになくなった。一日の大部分は白衣を着ている」 「俺も制服だよ」 「店と家の往復の時に着る服なんて最低限見苦しくなければいいって思うようになったな。そう言われると皆似通ったコーディネイトじゃないか?」 「そうそう、パンツが綿やデニムになったりするけど基本シンプルなパンツだ。トップだってシャツかセーター、カットソーだよね。あとはコートや防寒マフラー」 「村崎はキャップや帽子がそこに加わる」 「正明はパーカーが多い、んでよく似合う」 「トアがさりげなくお洒落だったりする」 「こないだ聞いたら、全部バナリパだってさ。アウトレットモールで70%オフの時に買いにいくんだって。会員になるとセールのメールが来るらしい。「同じブランドで揃えているとコーディネイトが楽だし、まとまりがいいのです」って言ってた」  衛は下から俺の顎をグインと突いたから。頭が仰け反る。 「ちょ!なに!」 「で?なんの話しだっけ?理は物欲が無くなって不思議だってことを言いたいのか?」  あああ……そうでした。脱線しましたね、すいません。

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