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つづき

「そんな顔しな~~いの。大丈夫よ、私は由樹とちゃんと仲良くやっていくし、これからは子育てっていうプロジェクトを完遂させなくちゃいけない同士なんだしね。  衛君……サトをお願いね。頭のいい子だけど、時々考えすぎてグルグルしたり弱ったりするでしょ?話しを聞いてやってくれれば、解決策を自分で見つけるから傍で見守ってあげて。  両親は私と由樹でちゃんと面倒をみるから安心していいわ。貴方達は好きな事を精一杯やってくれればいい、私はそれが何より嬉しいの。 25歳をこえてからの10年。この期間にどれだけの経験値を積めるか、前に進めるかが「いい男」の絶対条件。これは先輩の受け売りなんだけどね。 だからサトと一緒に前にどんどん進んでちょうだい。」 「……はい」  本当なら理も結婚して自分の子供を持てたかもしれない。理が選んだ事とはいえ家族としてそれを認めることは大変なことだろうし、割り切れない想いだってあったはずだ。 それなのに、こんなふうに言ってくれるこの人の気持ちを絶対に裏切ってはいけない。理が幸せにならなければ、悲しむ人が自分以外にもいるということを肝に銘じて毎日を過ごさなければならない。 「理と幸せになります」 「そうよ。それが皆の幸せに繋がるの。だから私も幸せになる。衛君におすそ分けができるくらいにね。お互い毎日を大事に生きましょう? きっとそれが未来に繋がるわ」  こみ上げてくるものを必死で飲みこんでいると、紗江さんがゆっくり立ち上がった。 俺の肩に優しく手を置いた後、兄さんのほうに歩いて行った。  背中から聞こえる兄さんと紗江さんと怒っている北川の声。  深呼吸をする。紗江さんの言葉を噛みしめる。また深呼吸をする。俺を一人にしてくれた心遣いを思う。  また深呼吸する。 ひっこんでくれない喉の奥の塊を少しずつ飲み込みながら実感した。  俺はこんなに幸せだ。 紗江さんありがとう……ございます。

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