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december.17.2015 受けて立つ魔道士

「へえ、そんなことになっているとは初耳です」 『小耳に挟んだ以上は高村さんに黙っているわけにはいきませんからね』 「知らせてくれて助かりました。そういや、西山は月1ペースで帰ってきているらしいですね」 『……なんでそんな事知っているんですか』 「必ず店にくるから、わかりますよ。どうしたってね」 『……』  電話の向こうで「バツが悪い」そのものの石田さんが目に浮かぶ。西山がどこまで気がついているの定かじゃないが、石田さんは優しさを大バーゲンするタイプの男ではない。  かわいがって仕事を教え、優しさ大作戦を繰り広げたというのに西山はあっという間に石田さんの所からいなくなった。  お互いいい年の大人だから、おせっかいを焼くつもりはない。とはいえ、西山はもう少し周りを見て、誰が自分を大事にしてくれているのか見極める必要がある。俺や北川さんは西山を玩具にして遊んでいるにすぎないし、そこまで面倒を見る気もない。  上司としてのスタンスをなかなか崩せずにいる石田さんが少し可哀想になった。  いやいや、そんな心配をしている場合ではない。武本とミーティングをしなくては!これをどうやって料理するか。黙っていてタナボタを期待するほど、俺は素直じゃないからな。  ふふん。

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