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つづき
「クリスマス終わっちゃうな」
リビングの壁にかかっている時計をぼんやり眺めてミネさんがそう言った。
「ほんとですね。怒涛の3日間が終わります」
「俺さ、料理の話しをしちゃうと夢中になるみたいでさ」
「僕は料理に興味のないシェフが作るものなんか食べたくありませんけど」
ミネさんはちょっとびっくりした顔をした。なんで?
「彼女と食事にいくと、どんなレシピなんだろうって想像するし、考えながら食べるだろ。まさしく味わってだ。当然乾燥も聞くじゃない?これ食べてどう思ったか、どういうところが美味しい?盛り付けは?」
「それのどこか変なんですか?僕にはわかりません」
「『私の話聞いてた?ソースに何が入ってるかなんてわからないわよ、美味しいからいいじゃない。それより、連休は絶対無理なの?クリスマスは?』という展開になる」
「ああ、なるほど」
「だから、さっきハルが全然いやがらないで話をしてくれて、感想や意見を言ってくれたじゃない。ミネ帳だしてガツガツ書きだしても嫌な顔しなかったし。なんか新鮮だったな」
なんでこんなにイライラするんだろう。ミネさんにとって料理は職業だ、おまけにプロだ。その相手が真剣に取り組んでいるのに、おざなりな対応ってどうなんですか?と言いたい。会話を楽しみたいのなら、料理を前にしている時はあきらめて他の時にすればいい。腹立つなあ……モヤモヤする。
「言ってもいいですか?」
「んん~?いいよ」
「ミネさんがこの仕事をしている以上、隠居でもしないかぎりクリスマスは地獄ですよね。
世間一般がクリスマスに浮かれているのを横目に、その浮かれ気分を盛り上げるために頑張るわけです。
人が休んだり楽しんだりする時に働くのがサービス業じゃないですか。
ミネさんと一緒にいることを選んだのなら、それを理解して応援するのが彼女です!
他の誰かと一緒のようにベタベタしたクリスマスを過ごしたいなら別の人を選べばいい!」
「えっ」
まずっ、怒りにかまけてつい本音を言ってしまった。
ミネさんはビックリした顔をしたあとフニャっと笑った。そしていきなり僕をギュウギュウ抱きしめたあと、頭をガシガシする。合わさった胸が離れて両腕を掴まれた後、そのまま揺さぶられて、僕の頭がカクカクした。
「うわあ~そうだよな。そうだよ。クリスマスに一緒にいてやれないことを負い目みたいに思っちゃってたけど、そうだよな!
一生俺にはクリスマスこないのよ。無いものねだられたって無理なんだよな!
すっげ~すっきりした!ハルありがと!」
カクカクするから!揺さぶらないで!
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