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つづき

「そのマグ、買ったの?」 ミネに聞いてみる。ニヘラっと笑みを浮かべて、遠くを見るように視線を浮かせた。 「これさ、クリスマスプレゼント、ハルがくれた」 「へええ」 「俺のマグ、口のところチップしててさ。買わなくちゃって思ってたから嬉しかった」 「そっか」 「あと嬉しい言葉もくれた。なんか俺本当に嬉しくってさ。気持ちが軽くなった」 「正明は人を持ち上げる天才なんだよ」 「天才?」 「そ、俺さ、衛が好きだって気が付いて悩んでいた時にね、同性を好きになるって性別を超えて相手の人間性を見極めて好きになれる「特権階級」なんですよ!って言ってくれて、救われた」 「特権階級か」 魔法の言葉だった。それを素直に信じられたからこそ今の俺がいる。衛の隣にいることができるのも、正明のおかげかもしれない。 「衛が仕事辞めることが決まって、でも俺はまだ会社にいなくちゃいけないって、それが不安だったり割り切れなかったりした時、正明が俺達を呼び出して、誕生日プレゼントをくれた」 「へえ」 「お揃いの万年筆。予想してなかったら、嬉しいを通り越しちゃって変な気分だったな。そこでも正明はナイスな言葉をくれた。戦場が違っても同志は同志ですって。さすが国文科だよ、同じ場所で働けないことを気に病んでいた俺はガツンと殴られたような気がしたね。 ほんと、正明はサイコーなんだ」 「わかるよ。俺も最高のプレゼントに思えた」 「大事にしてやろうな」 「うん」 いつもの軽妙さが鳴りを潜め、穏やかなミネがそこに居た。「優しい気持ち」それがもし形になっているとしたら、今のミネがそうだろう。 とても魅力的で惹きこまれる、静かで綺麗な微笑み。 正明?お前はミネに何を言ったのかな。ミネのこんな顔を見て、お前は大丈夫なのかな。 心の底に生まれる不安。俺はそれを見ないふりをした。

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