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つづき
地上波とBSに飽きてCSのMTVに合せたら「USA.TOP50.」が流れていた。プロモーションビデオの映像を見て音を聞いている方がいい。
少しお腹がすいたな。時計は1:00すぎ。そういえば蕎麦を食べていない。お湯を沸かして新得の乾麺を茹でようと袋を開けたら日本間から俊明がノソっと出てきた。
「水?」
「いや、腹減った」
僕はおもわず噴きだしてしまう。若造には飲み過ぎでムカムカとは無縁らしい。
「てか、父さんのイビキで目が覚めた。ありえん音量だよね」
「ちょうど蕎麦茹でるとこ、どのくらい食べる?」
「量とかわかんない。一袋何g?」
「ええ~と300g」
「兄ちゃんと二人ならそんくらい食べられるっしょ。トイレいく」
蕎麦は断然ざるそば派です。冷蔵庫を見るとそばつゆなるものが無い。母さんは麺だけ買ってどうするつもりだったのか。
しょうがないので、前にミネさんに教わったそばつゆをつくることにした。出汁はないのでお湯にホンダシをドバドバ入れて、お玉にみりんを2杯、醤油を1杯。味をみながら、みりん1と醤油0.5の割合で加えていきます。おおお~という頃合いでツユが完成。
面倒なので、麺は冷たいけど出汁は温かいバージョンにすることに。溶き卵とネギでそれらしい出来になった。
トイレから戻った俊明はぼ~とTVをみながらビールを飲んでいる。水でしめた麺をザルにあげてツユとテーブルに並べた。
「うわ、うまそ!」
「そばつゆがなかったから、味の保証はないよ」
「いただきます!」
あっという間に俊明は蕎麦をたぐり、豪快に食べ始めた。ツユもそれなりの出来だったし、乾麺とはいえ、やはりこの蕎麦は美味しい。
黙々と二人で蕎麦をすすれば3人分の量は15分程で無くなった。俊明はふう~とお腹をさすって満足そうにうなずいた。
「美味しかった」
「そっか、よかったよ」
「手際いいのな。俺は無理」
「仕事先で作り手の姿を見ているせいかな。一人暮らしも長いしね」
とたんに気詰まりな雰囲気になり、しまったと思う。そういう意味でったわけじゃないし、単なる事実を言っただけ。それなのに、単純な言葉があっという間に空気を変えてしまった。 言ってしまったほうがいいのかもしれない。トアさんの言うように兄として「いいんだよ」と伝えるべきだろう。
「俊明?」
「なに?」
「色々不愉快な思いをさせたことは謝るよ。申し訳ないって思うけど、でもこればっかりはどうしようもない」
「なに、改まってんだよ」
「家族の中で僕だけが違うことだよ」
僕は俊明をしっかり見つめた。逸らされた視線に心がズキっとなったけれど、やり過ごした。
「しょうがないことなんだ。理解できない事を思い悩む必要はない。家族にだって理解できないことはあるよ、そういうことだよ」
「にいちゃん……」
「僕にしてみれば、俊明が女の人を好きになる気持ちが理解できないよ」
「えっ!」
「そのくらい、わかんないことなんだ。不思議だよね、同じ兄弟なのにさ」
俊明の視線はちゃんと僕と交わった。
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