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<12月> オードブル大作戦-3

 働く男って、こういう顔をするんだ。   理さんはパソコンに向かってエクセルでなにか作っている。疑問点や必要作業が書かれたポストイットが剥がされてゴミ箱へ。その合間にキーを叩き、電卓を叩き、チラシとにらめっこして手帳をめくる。  僕がプレゼントしたスケルトンのサファリが握られているのを見て、くすぐったい気持ちなってもいいと思うんだよね。 「ミネ、プリンター借りるね。パソコンたちあげてもいい?それかプリンターのCDここにある?」 「CDはあるかもだけど、わからん。今手が離せないから、すきにして」 「正明、パソコンいじれるだろ?」 「エクセルで関数組めとか言われたら無理です」 「そんなこと言わないって。このUSBにいれたファイルを出力してくれるかな」 「わかりました~」  なんでここに呼ばれたのかは一目瞭然。理さんの下働きの為だ。 自然に二手にわかれて、僕は「チーム理」事務方ってとこかな。  実動部隊は厨房でなにやら作り始めた。オーナーさんは料理しながら電卓をたたいたり紙をめくったりしている。量りもあるし、オール目分量のいい加減さんかと思いきや意外と違うらしい。  飯塚さんのこんな顔初めて見た。ウキウキしてる飯塚さんって、男前だけど少しかわいい。この人けっこうかわいいもんね。僕の苛めたいモードを発動させてもいいけど、理さんを敵に回すのは嫌だ。それはつまりタケさんの怒りをかうことになるので、考えたくもない。  出力した紙を理さんに渡すとパラパラめくって確認したあとOKをいただきました。 「じゃ、こんどはパワポ。3つあるからその出力お願い」 「ぱわぽ?」 「あ~悪い。パワーポイントっていうオレンジでPのアイコン。 「ラフ1」から「ラフ3」までお願い」 「は~い」  実動部隊はオードブルを試作中。でも理さんがやっているのは一体何なのか?さっぱりわからない。  出力した「ラフ」なるものはオードブルのチラシだった。えええ~こんなの作れちゃったりするの?  お店のメニューって落差ありますよね?いかにもプロにお任せしました感満載のバリっとしたやつ。対して自分で撮りました~な料理の写真とワード感満載でクリアファイルに入っちゃっているみたいなパターン。  「武本理」作のこれはその中間な感じで、この店のアットホーム感に妙にマッチしている。 「この店の雰囲気にあっていますね」 「ん?あ、これね。正明はどれが好き?」 「この緑のかな」 「これか。このお店のカラーがこの色みたいなんだ」 「サブロって何語だろう。オーナーさんの名前じゃないし。それにしても料理つくってるときの飯塚さんって、あんな顔するんですね」  理さんは頬杖をついて厨房の方を見たけれど、テーブルの脇にある柱に隠れているから飯塚さんは見えない。 「楽しそうってか子供みたいな顔してるんだろ?神様はアイツに2ブツどころか5ブツぐらい与えてると思わないか?不公平だよな。俺もブツが欲しいよ」  理さん。あなたもけっこう神様に祝福されてるクチですよ? 「ハル~運ぶの手伝ってくれる?」  のんびりオーナーのお呼びがかかり厨房へ。 「んじゃ、そこのトレンチ、お盆のことね。料理のっけて向こうに運んでくれるかな。真ん中のテーブルでいいから」  うっひゃ~美味しそう!  こんな短時間に作れちゃうのは、さすがプロ。オーナーさん、ニヘラっとしているけど腕は確かなんですね。(あくまでも料理の見た目といい匂いの判断だけど)  僕は嬉々として料理を運んだ。これから試食がまっているのだから張り切るのは当たり前だ。 「オーナーさん、取り皿はどこにありますか?」 「あ、そこの適当に」 「調味料いるものありますか?」 「いや、とりあえずナシで食べてもらうから」  腰から下のエプロンって何かエロい感じがします。腰骨のところで紐を結ぶからかな?ニヘラオーナーがちょっと格好よくみえるくらいだから重要アイテム。エプロン、今度使おう(何に?なんて野暮なことは聞かないでください) 「理さん、試食ですよ~」  オードブル作戦、ようやく試食段階に突入です!

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