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第3話 マグノリアという男
泉の水はろ過しなくても飲める。だからこそ精霊たちもここへ案内してくれた。もしかしたら一番信用ならないのは人間かもしれない。
ならどうして僕は今、彼と一緒に暮らしているのだろうか。
「ロエル! 今夜はウサギだ」
嬉しそうに仕留めたウサギを見せてくる。実のところ、これが少しつらい。
採食主義ではないけど、さすがに狩りをしたばかりの動物は度惑いを隠せない。けれどこれが現実だ。わかっている。
肉をさばいていく彼を見ながら、ロエルは薬草の調合をする。体の調子はいつ崩れるかわからないからだ。
――いっそ水だけで生きていけるなら、ここまで苦しむこともないだろうに。
そうは思うけれど目をそらして生きるのはできない。
「ところでロエル、君はとても無口だ。俺の名前を忘れていないか時々心配になるんだけど?」
暗に名前を呼べと言われている。
「マグノリア」
「だから『リア』でいいのに。結構ロエルは頑固だよなぁ」
朗らかに笑うリアは、どうしてここに滞在するのかどうしても不思議だった。
追われている身でもない。国に帰ろうと思えば帰ることもできるだろう。
「ロエル、肉が焼けた。食べよう」
「ありがとう」
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