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あれは俺達がバース検査を受けるずっと前。
ちょうどお盆を迎えた頃の夏だったと思う。
前提としてお伝えすることがあるとすれば、有紀は俺にとって弟みたいなものであり、俺自身頼り甲斐があると思われたい節があったということ。
そしてまだ小さかった俺には、ホラーの耐性が今ほど付いていなかったことだ。
有紀は子犬みたいにふわふわしてるし、華奢だし、小さいし、いつもキラキラした目で俺を見る。慕われていると自負していた。
だからこいつの前ではいつでも格好いいリクでいたい。間違っても、お化けが苦手なりっちゃんのイメージを植え付けるわけにはいかないのである。
有紀が楽しみにしていたのは、実録の名に恥じないリアルな恐怖体験談を、有名な俳優や女優が演じるドラマ仕立ての番組だった。
最初の話は何とか我慢できた。誤解しないで欲しいのは我慢しただけであって平気なわけでない。その証拠にだんだんと背後にあるベッド下の空間が気になってくる。
テレビ、有紀、俺、ベッドの順で並んでいるので必然的にベッドへ背中を向ける事になるのだが、普段ならこの隙間に恐怖なんて感じない。
むしろ隠れんぼで隠れ場所に使うほど慣れ親しんだスペースだし、埃が溜まることなく綺麗にされて、物が何も無いことも知ってる。
しかし不思議なことに、誰かがいる気がしてくるわけだ。振り向けば見てはいけないものがこっちを見ているかも知れない。突然服を引っ張られるかもしれない、と。
「あっ、これぼくだいすき!」
背後に意識を持っていかれていた俺の耳に、有紀のハイテンションな声と怪しげな音楽が飛び込んできた。
『あなたは見つけられるだろうか』
男性ナレーションの声に合わせて一枚の写真が画面いっぱいに表示される。
うわあ…出た……
これはこの番組名物の写ってはいけないものを写してしまった場所を当てるクイズコーナーだ。最初にも言ったが俺は見えないものは信じない。
けど、見えるものは普通に怖い。
「えぇ…わかんなーい…」
頬を膨らませる有紀。俺は正直分かりたくないのだが、ついつい探してしまう。心臓をどきどきさせながら画面をじーと見つめていた。その時。
「っぅわあーーーッ!!?」
ガシッと力強く二の腕を掴まれた。
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