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必死の形相で掴まれた腕と伸びるその先を見上げると、ベッドの上からこちらを見下ろす渥の姿があった。 悪戯成功、と言わんばかりにニヤニヤとほくそ笑んでいる。 「ぐ、ぬう…!」 「リク!どうしたの!?」 俺の声に驚いた有紀が急いでぐるりと首を回す。あああっ…やばい!心霊写真にビビってたなんて絶対にバレたくない…! 「見つけたみたい、ユーレイ。な、睦人」 「え!?…あ、ああ!そう!見つけた!」 「えー!すごぉい!どこにいたのー?」 「右端の上の方。棚の後ろ」 俺ではなく渥が答えると有紀はテレビに顔を戻して「ほんとだ!なんかいるー!」とキャッキャしている。一応言っておくけど、喜ぶとこじゃない。 有紀の意識がテレビに逸れたことにホッとして、キッと渥に無言の怒りをぶつけた。 睨む俺を気にした素振りもなく、ベッドの上で自分の前を指差して「来る?」というジェスチャー。 多分俺がベッドの下を気にしている事に気付いてるのだ。有紀にはバレてなくても渥には全てお見通しらしい。 少し悩んで、悔しいけれどコクリと頷いた。 「有紀、俺ちょっとベッドの上行っていい?」 「え!やだ!」 「睦人はお前のせいでテレビ見えないんだよ」 「……リク…ベッド行っちゃうのお…?」 想像通りNOの返事をする有紀に、渥がピシャリと言い返す。そんな風に言わなくても…と思う俺に、番組そっちのけで俺の手を掴まえて眉尻を下げる有紀。可哀想になってやっぱりこのままここにいようかと悩み始めてしまった。 しかしそうなる事も想定内だったのか、渥が続けて「睦人もテレビ見たいの、分かるだろ?」と畳み掛けると、有紀は渋々と手を離す。 最初は不機嫌丸出しの顔だったが、タイミングよく始まる恐怖の再現ドラマに意識を持っていかれたみたいだった。 ベッドに上がると渥が壁際に下がって、空いたスペースに潜り込む。 それまで渥が居たから布団は適度に暖かい。今迄感じていた恐怖心が安らぐ気がした。 「怖がり」 「!……ちがうし」 有紀には聞こえないような小さな声で揶揄われた。ムッとして体ごと振り返り、先程の仕返しに軽く脛でも蹴ってやろうと足をモゾモゾと動かす。 『その時、私は異変に気付いたのです』 テレビから女優の語りが聞こえて、仕返ししようとした筈の足が止まってしまった。固まったと言ったほうが正しいか。 今、振り返ればきっと当分一人ではトイレに行けなくなる光景に出くわすと雰囲気で分かる。 分かっている筈なのに怖いもの見たさという謎の現象と、格好いいリクでいたいという強がりからテレビの方を振り向こうとした俺だったが… 「見なくていいよ」 渥の手が俺の頭を抱き込んだ。

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