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こうして何とか苦手なものを回避しつつ、俺の小さな威厳は保たれたわけだが…
よくよく考えてみると渥の所為だと思う部分もある。
だってあの日からだ。
「リクー!怖いやつママが借りてきてくれたからいっしょに見よ〜!」
「ま、また…?」
「だめぇ?」
「………いいよ」
夏の間ずっと心霊系の映画やら、ドキュメント番組に付き合わされる羽目になった。
「…渥は?」
「アッちゃん今日は見ないってー!」
「あいつ、いま部屋?」
「うん!部屋でアイス食べてたよ!」
そして渥は流石に毎回毎回一緒には見てくれなかった。…まあいい。俺は怖くない。見えないものは信じないからな。怖くないから!一人で見るわけじゃないし!全然怖…く…
「渥!今日夜一緒にDVD見るぞ!」
「やだよ」
「なんでだよ…!おねがい!今日のは特に怖そうなんだ」
「もうバラしちゃえば?お化けが怖いって分かったくらいで、有紀のリクーすごーいキラキラーは無くなんないんじゃない?」
「無くなったらどうするんだ!自分だけお兄ちゃん面してずるい!」
「お兄ちゃんだし……しょーがないな。じゃあもう面倒くさいから最初からおれんとこ居ろよ」
「やった!サンキュー」
怖くはない。怖くはないけど、渥がいた方がいい。2人より3人の方が心強いじゃないか。
そのかわりに渥が怖い時は俺が一緒に居てやるからさ。
「ていうか見えないものは信じないんじゃ無かったの?」
「…信じないけど、それとこれとは別なんだ」
「……ふーん」
「…な、なんだよ…その目は!笑うな!…っ、ニヤニヤすんなー!」
だからさ、渥。
これからも俺が平気じゃない時には傍にいてくれよな。
end.
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