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「へー!1年にも男の子のΩ居たんだあ。全然知らなかったけどカワイーね」 「!」 「体も小ちゃいし、女の子みたい!」 「!!」 「で?そんなΩくんが俺に何の用ー?」 散々脈のない冷たい反応ばかり受けていた藻武は、久しぶりの好感触な反応にピクピクと頬をニヤケさせた。 「何の用って…分かるでしょ?」 「んー?」 「あっ…」 「アハ。やらしー声出すねえ。こんな空き教室に呼び出すなんて、いーの?俺遠慮とかしないけど」 「うん、うん…もちろん、だよ」 ヤる気満々で来ました、とは言えず藻武は恥じらう素振りを見せる。 机に腰掛け、傍で立ったままだった藻武の首筋を優しく撫でたのは黒澤有紀だ。 かの有名な黒澤渥の実弟であり、噂では男女ともにストライクゾーンが広く下半身がかなり緩いと有名な男である。 痛みの少ない金髪は有紀の派手な雰囲気にピッタリで、その存在は遠目からでもすぐに見つけられるほど華やかだ。 実を言えば、最初から藻武の頭には同学年である有紀の存在が浮かんでいた。 しかしこの順番になったのには、もちろん理由がある。 『もし万が一、いや億が一に付き合えたとしてもあいつは絶対浮気するだろ。あいつ入学してから一人も決まった相手作ってないんだよ?』 寺川である。 浮気する人種は避けて通りたい。玉の輿が目的という不純な藻武ではあったが、自分一人を愛して欲しいという純な一面も持ち合わせていた。 しかし寺川の言う通り、有紀は恐らく一人だけでは満足できない人間だろう。脳内ドピンクの藻武をもってしても対応し切れない予感しかしない為、必然的にこの順番となったのだ。 ――こうなったら有紀くんを僕にメロメロにさせて、僕以外考えられないようにするしかないよね! 「あっ、でもね!有紀くん。僕…初めてなの」 もちろん嘘である。 「だから優しくして欲しいな…」 目元を赤らめる技はだいぶ前に取得済みだ。有紀はそんな藻武の弛まぬ努力を知ってか知らずか、目を細めて腰に手を回す。 「いい匂いするねー。ヒート近いんでしょ?」 「いい匂い…!?ほんと!?やっぱ普通はそうだよね!?」 思わず食い気味で反応してしまった藻武は、慌ててしおらしい態度へと戻した。 「あ…ごめんね…緊張しちゃって」 「んーん、じゃあ項噛まれないように気をつけてね?」 「そんなっ…噛んでもいいよ…?」 ――むしろ噛んで!お願い! 噛んでくれたらもうこっちのもんだし!! 有紀の言葉に内心テンションが急上昇している藻武に対して、飛んでくるのアハハという愉快そうな笑い声。 「ちがうちがうー。そうじゃなくて!もし間違って噛んでも、俺ソッコーで番関係解消しちゃうと思うから。気をつけた方がいいよおってこと」 「!?」 すぐ傍に見えるのは猫のようなまぁるい笑み。 この二日間藻武にとっては衝撃的な事柄が多々あった。 恐怖を感じた瞬間もあるが、ここまでゾッとして血の気が引いたのは始めてだった。

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