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「耳元で!喋るな!」
「リク耳弱いの?かわいい~」
にやにやしながら笑われて、恥ずかしいやら腹立つやらで、俺は急いで手に持っていた雑誌を広げ直す。気にしてませんアピールだ。
「あー!まだ話終わってないのに!」
「………キスの日だからってそれがどうしたんだよ」
雑誌を読むフリをしながら、問い掛けると有紀はこちら側にひょいっと顔を覗き込ませてきた
「えっとね~、キスしよ?」
「はい?」
「キスの日にはキスをしないと!」
「しませんしません何言ってるのこの人」
「人目が気になるなら物陰に…」
「隠れません!そもそもキスというものはだな、恋人同士がするものであって、普通は恋人じゃないのに唇をそう簡単にくっつけたりしたら駄目なの!」
「唇以外ならいいってこと?てか、ならさっさと番になろ~!んでエッチしよ!俺、リクとの子供はやく欲しい。絶対可愛いもん!」
「いや、ちょっと話飛びすぎだろ…。キスの話はどうした。あと、ここ部屋じゃないからな…!」
どうか破廉恥発言控えてください。
心なしか周りの視線が痛い。
…そろそろ出るか。
俺は読んでいた雑誌を閉じると、有紀に声を掛ける。
「それじゃ、俺これ買ってくるから」
「リクー…」
「ん?」
俺が離れようとした途端、寂しそうな顔をした有紀にギュと腕を掴まれた。
どうかしたのかと、今度は逆に俺が顔を覗き込んでやると甘めの整った顔が近付いてきて、「あ」と思った時にはもう遅い。
噛み付くように口を開けたかと思ったら、予想に反してちゅ、と首筋の柔らかい部分に唇が触れた。
流れるような一瞬の出来事。
手に持っていた雑誌がバサっと床に落ちる。
「リク、いいにおい。…俺だけのだよ」
色気のある表情で笑う有紀に、阿保みたいにポカーンと開く口。
目的が果たせて満足したのか有紀は「俺もジャ◯プ買お~」とスタスタと反対側のコーナーに向かって歩いて行ってしまう。
取り残された俺が暫く固らざるを得なくなってしまったのは…言うまでもない。
end.
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