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「ケーイチもチョコ貰ったのか?」 「うん、少しだけど。食べる?」 「…ケーイチが貰ったやつを食べるわけには」 言いながらどこに貰ったのかとケーイチの周りを見渡すと、佳威同様に机に掛けられている紙袋に気付いた。俺でも見たことのあるチョコレートメーカーの紙袋だ。たくさん入れても底が抜けそうにない頑丈な…たくさん入ってるな。 「貰ったのって、これ?」 「そう、佳威に渡すついでに俺にも渡してくれるんだよねえ。別にいいのに」 申し訳なさそうに苦笑いを浮かべるケーイチに、怪訝な表情を向けてしまう。何をおっしゃてるんだろ、この秀才くんは。 恋愛に疎い俺でも分かる。あの紙袋のチョコブランドを渡されて本命じゃないわけがない。 しかも俺の見る限り、手作りもチラホラ見える。さらに手紙付きだ。佳威のついでに手紙も付いた手作りのお菓子を佳威の友達に渡すというのか。 この聖なるバレンタインに。告白に絶好のチャンスだぞ。そこまで暇人で個性的な女の子がいるなら是非連れてきてもらいたいものだ。 そもそも考えてみればケーイチがモテない方がおかしい。 佳威というαの横に並んでも見劣りしないなんて普通じゃない。見目がいい証拠だ。 華やかさや、放つオーラはどうしてもαに比べると劣ってしまうが、αを差し置いて首席というハイレベルな脳味噌の持ち主だぞ? なのにガリ勉でもインテリ系でもない今時の垢抜けた男子高校生。地毛なのかは分からないが、サラサラなセピアのような髪色はいつも軽くワックスで整えている。清潔感に溢れる男子って意外と居ない。なかなか見ない。その上誰にでも優しい好青年ときた。 これで恋に落ちない女子がいない筈がない。 「……ケーイチもなかなか罪作りな男だな」 「え?どういうこと?」 「俺よりタチ悪いんだよ、こいつ」 チョコを避けてできたスペースに上体を倒した佳威が、顔だけをこちらに向けて呆れたように吐き捨てる。俺は躊躇うことなく頷いた。

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