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終章 4
「兄貴、一回出させてやってもいいよな」
「そうだな、その方がいいかもしれないな」
互いに目線を交わし、政臣が頷いたと思いきや。二人が徐に涼正の前で跪いたものだから、涼正は驚き固まり、茫然と政臣と鷹斗を見下ろしていた。
傍から見れば、裸の男にこれまた裸の男二人が跪くなんて相当に変な状況だろう。けれども、この浴室には三人以外誰もいないのだ。ということは、涼正以外誰も止める人間がいないということでもある。
しかし、涼正も焦らされ続け高められた熱とこの場の甘い雰囲気に既に飲み込まれ正常な思考が出来なくなっていた。
先程から、頭に血が上ってしまったかのようにぼうっとして足元が覚束ない涼正はふらりと後ろによろけてしまう。けれども、丁度後ろが壁だったらしくトンッと背がタイルに当たって止まった。
「焦らし過ぎたから、ここからはたっぷりと甘やかしてやるよ」
「存分に啼けよ」
二人が口角をクッと持ち上げるのが涼正の目に見えた次の瞬間、信じられないような光景に涼正は目を見開いた。
「ふ、……ああっ!!」
腰を引くことも出来ずに涼正はタイルに背を押し付けながら悶える。
政臣と鷹斗が二人して涼正のペニスにいきなり舌を這わせたのだ。
痛いほどに張り詰めた竿を唇で食まれ、唾液をまぶしながら舌先でぬるぬると亀頭を擦られ、涼正は啜り泣きに近い嬌声を上げながら首を仰け反らせ無防備に喉を晒す。
どちらがどの場所を責めているのかなんて触れられた瞬間から吹き飛んでしまっていた。
亀頭の先を口内の温かい粘膜に包まれ、陰嚢までもを舌先で突かれ転がされると良すぎて涼正は息が止まってしまいそうだ。
体が跳ねる度に涼正の後頭部がタイルに当たるが、痛みよりも与えられる悦楽の方が勝った。
「も、イク……から。離し、っあ、ああああッ――!!」
ジュルリと音を立て吸われた瞬間、どうしようもないほどにペニスの根元からせり上がってくる射精欲求を感じ二人を引き剥がそうとした涼正だったが震えた腕では突き飛ばすほどの力もなく。
そのまま快感の渦に飲み込まれるように甘い声を上げると大きく体を震わせ達してしまっていた。
目の前が白くスパークし、腰から下の感覚が消失してしまったかのような錯覚に襲われ、涼正はタイルに背を預けたままずるずるとその場にへたり込んでしまう。
「はあ、……はっ、……っ」
「ん、結構沢山出たな。顔に飛んだし」
「……、濃いな。だが、涼正のだと思うと悪くないな」
荒い息を溢しながら涼正が見上げると、政臣と鷹斗が喉を鳴らす姿が目に映った。政臣の唇や鷹斗の頬に付いた白い液体は先程涼正が放ったものに違いない。
それを、政臣と鷹斗の扇情的な舌が舐めとる様は酷く淫猥で。ずくりと涼正の下半身が疼くのを感じた。
浴室に微かに青臭い匂いが混じる。体を洗いに来たというのに、このままではその目的も果たせなさそうである。
けれども、涼正はそれが嫌ではない。
――本当に、おかしい。
涼正の唇に艶やかな弧が描かれる。二人に気持ちを伝えた瞬間から、いや二人の事が好きだと認めた瞬間からきっと自分は自分を戒める箍(たが)が外れたのだろう。
だからこそ、ベッドに移動する時間さえも惜しい程。早く二人が欲しくて堪らない。
涼正は熱い吐息を震えながら吐き出し、もどかしそうに腰を揺らした。下肢の奥まった部分が二人を欲して熱を持っている。
「まだ足りないって顔だな」
「ははっ、本当に淫乱だな」
燻る情欲の炎を涼正の瞳に見たのか。政臣と鷹斗が浮かべていた笑みを深めた。
引き締まった腹部を下に、下にと辿ると勃ち上がった二人のペニスが涼正の視界に入った。
――あれで、……。
涼正は湧きあがる欲望を唾液ごと飲み込み、胃の奥深くに沈めようとしたが失敗した。淫らな想像が頭の中から離れず、連動するように後ろの窄まりが収縮するのを感じる。
直接に触れて皮膚であの熱を感じたい。そう思ったら、もう自分では止めることが出来なくなっていた。
熱に浮かされたような瞳の涼正は四つん這い状態で鷹斗へ近づくと、その猛りに徐に手を伸ばし唇を寄せた。
唐突なこともあってか、鷹斗の体がピクリと跳ねる。
「っ、涼正……、いきなりフェラとか……」
上目で見上げると切なそうに眉を寄せる鷹斗がいて、涼正の胸になんともいえぬ恍惚とした気持ちが湧きあがる。
もっと、感じて欲しい。
その気持ちに突き動かされるように、涼正は大きく開いた口の中に鷹斗のものを迎え入れていた。
「ん、ふ……う……っ」
政臣のもそうだが、鷹斗のものも大きく。限界まで開いた顎関節が軋むような音を立てるが、涼正は口を離そうとしない。
それどころか、奥まで咥えこみ、舌先で竿を刺激しジュルジュルと粘着質な音を響かせ啜った。口内に広がる青臭い匂いと独特の苦みは決して好ましいものではないというのに。それが鷹斗のものだと思うだけで涼正の体を熱くさせる。
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