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第五章 5

 鷹斗に掴まれた涼正の手が、混乱する胸中を表すように小刻みに震えた。  そんな涼正の様子をわかってか、唇を離した鷹斗が間近で嘲笑を浮かべる。 「何でって顔しているが……。アレは、アンタが送ってきたんだろう?」  鷹斗が初めて見せる、馬鹿にしたような笑みに涼正は頭を殴られたようなショックを受けた。今までも嘲笑に近い鷹斗の笑みを見たことはあったが、本当に涼正を馬鹿にするようなものは一度としてなかった。 「……そんな、もの……」  悲しさや悔しさで胸が一杯で、言葉が詰まる。〝知らない〟と、そう続けたいのに口を開くと嗚咽が洩れそうになった。 「しらばっくれても無駄だぜ。ホント、アンタがこんな淫乱だって知ってたら最初から悩んだりしなくてすんだのにな」  鷹斗が涼正の耳元で笑う。 「……っ、違う。俺は、知らな――――」  首を振って否定する涼正の動きが、政臣の持つ携帯の画面を目にした瞬間、ピタリと止まった。  ザアッ、と血の気が足下から引いていく。鷹斗が手を掴んでいなかったならば、涼正はその場に倒れていたかもしれない。  それだけ、画像の中の涼正は見るに耐えない姿だった。  相手のものか、はたまた自身のものかはわからないが体液でドロドロに濡れ。しかし、それでも後ろには男の欲望をくわえ込む、貪欲な姿。  身体の所々に紅く咲いた凌辱の痕も目を惹くが、何よりも無理矢理身体を開かれたというのに硬く育ち雫を溢れさせる涼正のペニスが行為に反応していることを如実に語っていた。  ――……嘘、だ。こんな……。  自身でも知らなかった浅ましい姿を眼前に突き付けられ、涼正は茫然とした。力一杯に鷹斗に掴まれた手も痛む筈なのに、今は感覚そのものが遠い。 「……何でソレ、持って……」  漸く、震える唇で紡いだ言葉は消えそうなほどに掠れていた。  四條が涼正に見せたのは、縛られた涼正の画像だけだったはずだ。それも、取引の後消してもらっている。  では、目の前の画像は一体何なのだろうか?  頭を必死に動かしながら、責めるような政臣の視線から逃れるように涼正は顔をうつ向かせた。しかし、それで政臣や鷹斗が涼正を逃す筈もなく。 残酷に、確実に追い詰めるように政臣が言葉を続ける。 「何でと言われてもな。父さんが送ってくれたんだろう」 「違う!!」  カッと頭に血が昇るのを感じた涼正は、鷹斗に腕を掴まれたまま叫んでいた。  愛する息子達に浅ましく、情けない姿を自ら晒す親がどこにいようか。それに、そもそも涼正はこんな情けない姿を見せたくないからこそ、あの取引に応じたのだ。そんな涼正が、自身で息子達に画像を送り付けるはずがない。

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