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第五章 11

「涼正、違うんだ。別に俺達は……いや、今は言っても無駄か……」  滅多に聞かないような狼狽した政臣の声が聞こえ、涼正はつられて視線を向けた。  ――な…んで、そんな顔を……。  痛みを堪えるように寄せられた眉。涼正を見ようとしない瞳が、瞼に焼き付いて離れない。  聞いてしまったら後に戻れないような予感があるのに、涼正はその言葉の先を気にせずにはいられなかった。 「何も考えられないくらい、感じさせてやるよ」  幸いと言うべきかはわからないが、鷹斗が動きを再開させた事で涼正は政臣に言葉の続きを促さずに済んだ。が、涼正の瞼の裏にはまだ、政臣の痛みを堪えるような表情が焼きついていた。 「……う、ぁッ!?」  敏感な下肢に息を吹き掛けられるだけで、涼正の腰が跳ね、頭の中で色々と考えていた事が強い快感に押し流されてしまう。  赤く覗く舌が、部屋の室内灯に照らされ光る様がひどく淫らだ。見せ付けるように、鷹斗は涼正のモノに舌を伸ばした。 「……ん、これが涼正の味か。ほら、……気持ちいいだろ?」  躊躇いなく舐める鷹斗とは違い、男に舐められることに抵抗のある涼正は必死に頭を振る。 「……っ、鷹斗……、離し……ッ、ん……」 「嫌だね。黙ってしゃぶらせろよ」  涼正の些細な抵抗で鷹斗がとまるはずもない。  舌先で狙いすましたように先を捏ねられ、涼正は息が止まりそうだった。くわえられ、尖らせた舌先で弱い部分を擽られる。ゆるく芯を持っただけの状態だったそれは、鷹斗の口の中でみるみる内に硬さを増していった。  鷹斗の口許から聞こえる濡れた音が、涼正を耳から犯していく。喉の奥までくわえこまれ、舌でねぶられ、涼正は啜り泣くような声を溢していた。  それなりに、性行為も経験してきた涼正だったがこんな強い快感は感じたことがない。  あっという間に欲を吐き出す寸前まで押し上げられ、腰の奥がズンと重くなる。解放を望むように太股までが震えた。 「……ん、ほら。そのまま、口に出しちまえ」  止めとばかりに喉の奥で一際強く吸われ、涼正はなす術もなく鷹斗の口内に白濁をぶちまけていた。 「ひッ、ぁ――――……ぁ、ああっ!!」  あまりに強い快感に射精感が治まらず、腰が痙攣したように跳ねる。  残滓さえも啜るようにイったばかりで敏感になっているペニスを口内でねぶられる感触は涼正にとっては堪えがたく、涙が溢れた。 「っん、……結構、出たな。しかも、濃い」  半分放心状態の涼正の雄から口を離した鷹斗が喉を鳴らす様子を、涼正は信じられないとばかりに見詰めていた。  詰ろうにも言葉が出ない。 「っ、は……、は……っ」  心臓が煩いくらいに鳴って、いつまでも呼吸が落ち着かない。  涼正はイってしまえば楽になるかと思っていたが、イったことで更に体が敏感になってしまった気がした。  赤く染まった涼正の肌の上を撫でる政臣と鷹斗の視線にすら、ゾクゾクとした痺れを感じてしまう。  漸く呼吸が整ってきた頃、鷹斗が唇を舐めながら尋ねてきた。 「……涼正は、自分で抜いたりしてねぇの?」  濡れた舌が口内からチロリと覗く。  あれに、今まで翻弄されていたのだと考えると涼正は鷹斗を直視出来なかった。 「する、わけ……ない……っ」  涼正には視線を逸らしながら答えるので精一杯だった。  しかし、鷹斗にはそれが気に入らなかったようだ。 「ふーん。まぁ、そうだろな。自分でするのも抵抗ありそうだし、家には俺等がいて女連れ込めないだろうし。あぁ、でも男は別なのか」  鷹斗の棘のある言葉が涼正の胸を刺す。 「違……っ、く…ぅ……っ!!」  否定しようとした矢先。いきなり何の前触れもなしに窄まりに浅く指を突きこまれ涼正は痛みに呻いた。  痛みはあるがソコは慣らされていないにも関わらず、鷹斗の指を一関節分呑み込んでしまっていた。  突き入れられたのは指一本分なのに、圧迫感を感じずにはいられない。グルリと縁にあわせて鷹斗の指に中を掻きまぜられると、反射的にソコを食い締めてしまい涼正は打ちのめされたような気持ちになった。 「ここ、ぐちゃぐちゃにされてどんな気分だったんだよ?」  責めるような声の鷹斗の質問に涼正は答える事ができない。 「っ、……それ、は……、んっ……」  涼正を追い詰めるように、鷹斗の指が深く突き立てられ、涼正はその違和感をやり過ごすように唇を噛んだ。  あまりに強く噛んだせいか、口に鉄の味が広がる。 「鷹斗、あまり苛めてやるな」  見兼ねた政臣が涼正を庇うように鷹斗からの視線を遮り、涼正は安堵した。しかし、鷹斗からの鋭い視線と棘のある言葉から逃れられたのはいいが、指はまだ突き立てられたままで涼正を苛み続けている。  時折、中を引っ掻くように探られ抵抗を味わうようにゆっくりと抜かれるとどうしようもなく落ち着かない。 「……っ、ぅ」  噛み締めた筈の涼正の唇から噛み殺しきれなかった呻きが溢れた。酷く緩慢に動くそれに、呼吸もなにもかも掻き乱され、翻弄される。 「……兄貴だってさっきネチネチ、ネチネチ涼正の胸ばっかり弄ってただろ。それを苛めてるって言うんじゃねぇのか?」  政臣の行動が気に入らない鷹斗が、拗ねたような声を出した。  指を中で動かされながらも、涼正はその通りだと思った。しかし、口を開けた先から全て甘い声に変わってしまいそうで声を出すことは出来ない。 「俺はいいんだ。仕置きだからな」  迷いも、躊躇いもなく言ってのけた政臣に涼正は頭痛がした。  一体、どんな言い分だ。と、突っ込みたくもなるが、そんな余裕など涼正にはなかった。  確かに、四條に犯されはした。しかし、もともと涼正の身体は涼正のものであって鷹斗と政臣のものではない。そうであるから、仕置きをされる理由など最初から存在しないのだ。  それなのに自分は今、こんなに理不尽な責め苦にあっている。そう思うと涼正は胃の底から沸々と怒りが込み上げてくるのを感じた。けれども、体内で鷹斗の指がその存在を涼正に知らしめるかのように動く今、その気力すら削がれている。  ――……早く、抜いてくれ……。  自分を苦しめている原因が無くなることを願い、ただ耐え唇を噛み締める涼正だったが、すぐにそれは間違いだったと後悔した。

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