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第五章 12

 鷹斗の指先が引っ掻くように中を探り、浅ましく反応した涼正の中がヒクリと蠢く。それを惜しむかのようにゆっくりと指が引き抜かれていく感覚は、産毛が逆立つような気味の悪さと、同じくらいの気持ちよさがない交ぜになったものだった。 「っ、ぅ……ん、……ぁあっ」  明らかに艶を含んだ声が涼正の唇から溢れる。それを見逃すような鷹斗ではなかった。 「っく、ぁあ……ッ!!」  引き抜かれかけていた指が再びゆっくりと涼正の中を穿ち、抉るように動いたのだ。 「だったら別に俺もいいだろ? ほら、涼正も気持ち良さそうにしてるし」 「……はぁ、勝手にしろ」  「あぁ、勝手にするさ」と短く返すと、鷹斗は再び涼正の中に指を侵入させてきた。今度は指の本数を増やしたのだろう、先程よりも太いそれが涼正の後ろに潜りこんでくる。 「う、ぁ……っ、も……苦し」  入口が抉じ開けられ、拡げられる苦しさに涼正はいやいや、と頭を横に振った。しかし、鷹斗の手が止まる気配はない。寧ろ、奥を目指すようにゆっくりと押し込まれていく。 「……いや……だ。抜い、て……頼む、から……ぁあ!!」  悲痛な叫びが涼正の喉から発せられるが 、聞くつもりがないらしい鷹斗はうっすらとした笑みを浮かべ涼正の耳を軽く噛んだ。  外耳に犬歯を立て、舌でねぶり。耳孔に舌を差し入れ、わざとらしく音を立て舐めた。 「……嫌だって言ってるわりに気持ち良さそうな顔してるぜ?」  吹き込まれるように耳に直接囁かれたその内容に涼正は絶望的な気分を味わった。  ――嘘だ。感じてなんか……。  そう否定したいのに、鷹斗の指が中で動く度に圧迫感とは違う何かが背筋を這い上がり涼正の息を乱させていく。 「見ろよ、涼正。アンタのここ、俺の指を美味そうにしゃぶってる……」  グルリと掻き混ぜるように動かされ、狂おしい程に意識してしまう。 「……っ、あ……言うなぁ、ぁあッ!!」  涼正は、狂ったように頭を振った。そんなこと聞きたくも、知りたくもなかった。  相変わらず異物感はあるものの、涼正のそこは鷹斗の言う通り。柔軟に指を呑み込み、しゃぶるように絡み付き始めている。  無理矢理されているというのに、中の指が前立腺を掠める度に涼正の体がベッドの上で跳ね。否応なく昂らされていく。  更に追い討ちをかけるように、乳首を爪弾き。乳輪ごと政臣の指の腹でくにくにと揉みこまれると腰が浮き上がりそうな程の快感が涼正を襲った。 「あっ、ぁあ……っく……」  仰け反らせた喉を食い破らんばかりの強さで鷹斗に噛まれ、涼正の瞳から新たな涙が落ちる。  噛まれた部分が熱い。もしかしたら、傷付いて出血しているのかもしれない。  涼正はこのままここで食い殺されてしまうのではないだろうかという錯覚に陥った。  涼正が補食される草食動物だとしたら、政臣や鷹斗はそれを補食する肉食動物だろうか。補食される動物は自身を食らわれる時に痛みではなく快楽を感じると何かで見たのを涼正は思い出していた。  だとしたら、食われる間際の涼正が感じているこの快楽は補食される動物のそれと一緒か。そうであればいい、と涼正は願うしかない。 「っ、あ……ん、ぅ……」  ゆっくりと撫で擦るように指が前立腺の上を往き来し、指でくびり出された乳首をねっとりと舌でなぶられ頭の芯が痺れる。  疑いようもなく涼正は感じていた。  一度精を放ったはずのソコも既に堅く張りつめ、呼吸をするようにパクパクと開閉する鈴口からは透明な密が盛り上り、竿を伝いシーツに落ちた。 「ははっ、淫乱だな」  涼正の体をつぶさに見ていた鷹斗の嘲笑うような声に、涼正の目からまた涙が溢れた。  ――――もしかすると、自分は本当に淫乱なのかもしれない。  ザラリと乳輪ごと胸の凝(こご)りを舐められ、口に含まれ。熱い舌先で転がされると甘い痺れがそこから広がり、後孔が意思とは関係なく指に絡む。  既に蕩けたソコは痛みではなく、もどかしいような快楽を涼正に与え少しずつ理性を溶かしていく。  指を動かされる度に体が跳ね、泣き声ではなく甘く掠れた喘ぎが溢れた。  その姿は最早父親としての威厳もプライドもなく、快楽に狂わされた一人の雄。  涙や唾液でグシャグシャの顔も、汗でしっとりと濡れ室内灯の明かりの下で艶かしく動く体も。そのどれもが政臣と鷹斗を魅了した。  無意識の内に揺れる腰つきは男を誘うソレで。テラテラと濡れ、赤みのかかった亀頭は花を彷彿させる。 「……これを他のヤツが先に暴いたかと思うと。マジでムカつくな」  苛立ったような鷹斗の声とともに叩くように中を抉られた。 「う゛ぁ、っ……!?」  ビクリと背が仰け反り、意識が飛びかけるが、強く胸の突起を噛まれ無理矢理引き戻される。  思わず目を開いた涼正の視界に胸の突起を熱い口内で弄ぶ政臣の姿が映った。ちゅぷっ、と音を立てながら離されたそこは赤く熟れて、その周りには所有の証でもつけるように歯形がついている。  目を逸らしたいのに、唾液でヌラリと光るそこから目を逸らせない。  政臣が涼正のその様子に気付いたのか、クッと口角を上げた。  薄い上下の唇で扱くように刺激され、チュッと吸い上げられ鈴口から新たな蜜がプクリと盛り上がる。竿を伝い落ちる感触が焦れったくて、涼正は不自由な体をその場でくねらせ身悶えた。 「っ、ん……う」  元から備わっていた素質が完全に花開いた様子の涼正の姿に、鷹斗は爛れたような思いを感じた。 「……ホント、失敗したな。あの時、あのまま食っちまえばよかった」  そう言いながら、一際強く涼正の弱いところを穿つ。 「っ、あぁ……いぁ……あ!!」  強すぎる刺激に涼正は目を剥いた。身体がバラバラになりそうなほど感じて、息が上がって苦しい。ハッハッと犬のように荒い息を溢し、閉じきれない口からはだらだらと唾液がシーツに落ちシミを作っていく。  理性も意識も飛びそうな涼正の耳に政臣の落ち着いた声が聞こえた。 「鷹斗、過ぎたことだ」  乱暴なまでに叩き込んだかと思いきや、今度は焦らすように指を動かす鷹斗が苛立った声で返す。 「でもよ、兄貴もムカつくだろう? 俺達はあれだけ我慢してたのに、戻ってきたら涼正の処女かっ浚われてんだぜ」 「まぁ、な」  政臣も鷹斗と同じで思うところがあるのか、胸の突起を弄る指に力が込められ、涼正は痛みに呻いた。 「風呂場で倒れた時に無理矢理にでも突っ込んどけばよかった……」  考えることを放棄していた涼正の頭が、その一言に反応した。 「っ、……風呂、場……? どうい……う、ぁ……」  ズルリと引き抜かれる感覚に身震いしながら、鷹斗を見詰める。そうして、目があった瞬間、ニヤリと鷹斗の唇がつり上がった。

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