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第五章 13

「アンタは夢だと思ってるから覚えちゃいないかもな」 「……夢?」  その言葉に、涼正はピクリと肩を跳ねさせた。  ――っ、まさか……。  嫌な予感が全身を駆け巡り、涼正はその先の言葉を聞きたくないと思った。しかし、耳を塞ごうにも両手は縛られたままだ。  そんな涼正の耳元に、ゆっくりと鷹斗の唇が近付く。 「そう、夢。けど、夢じゃない。ほら、アンタ最近風呂で逆上せて倒れただろ? あの時の事だよ」  頭を殴られたような衝撃に涼正は呼吸をすることも忘れ、鷹斗を見詰めた。 「っ、でも……あれ、は夢で……」  そう口にしたが、そこから先は続かなかった。  涼正もあの日体験した生々しい感触を夢だと思えていなかったからだ。ただ、夢だと言い聞かせないと自身を保っていられなかった。  ――……そ、んな……。  愕然としながら、認めたくない涼正はすがるように政臣を見詰めた。しかし、政臣から返ってきたのは涼正が望んでいた言葉とは違う言葉だった。 「夢じゃない。あれは、現実だ」  突き付けられた真実に、涼正は目眩がした。 「っ、じゃあ……俺……っ」  そこまで口にして涼正は言葉を切った。頭の中で、一部靄のかかったような記憶がフラッシュバックされる。  柔らかなタオルが身体に触れ、熱い手が涼正の肌を上を撫で。下肢に触れられ、達するまで導かれた。  それがすべて本当に起こったことで。自分に触れていたのは、目の前にいる二人の息子だった。なんてタチの悪い冗談なんだろうか、と一笑出来ればよかったのに。真実を知ってしまった今、涼正には笑う余裕すらなかった。  思い出すだけで羞恥で涼正の顔が赤く染まる。いや、それだけではなく、最後の最後までギリギリ自分を繋ぎ止めていた糸がプツリと切れてしまったような気がした。  フッと涼正の体から力が抜ける。もう、涼正には抵抗する気力など残っていなかった。  考えることすら放棄した涼正は、ただ与えられる快楽に体を波打たせる。  まるで、心が身体から剥離してしまったようで、涼正は快感だけは得ながらもこの行為をどこか他人事のように感じていた。力の抜けた身体は貪欲に鷹斗の指を受け入れ、奥へ、奥へと誘う。  双丘を掴み開いて、ほぐれきった後孔に二本の指を突き立てながら鷹斗が思い出し笑いを浮かべて言った。 「あん時の涼正は可愛かったぜ? 〝イカせてくれ〟って俺達に泪目で頼んでさ」  鷹斗の言葉に涼正は震えた。 「っあ……ぁ……」  鈍い痛みが胸に走り、ひきつれたような掠れた喘ぎが喉から溢れた。身体は恐ろしくなるほど昂っていくのに、心が急速に冷えていく。心が死んでしまうとはこんな状態なのだろうか、と涼正はぼんやりと思った。  縛られている腕の痺れも遠く、快楽だけが今の涼正が感じられる唯一のものになっていた。 「今日は、もっと可愛がってやるよ」  そう言って鷹斗がゆっくりと中の抵抗を楽しむように指を抜いていく。指の節が涼正の弱い部分に軽く引っ掛かり、涼正は仰け反るようにして無防備な喉を晒した。 「っ、あ……」  完全に指が引き抜かれると中が酷く疼いた。堅く、太いもので中を掻き回して欲しくて、ねだるように入り口がヒクリと蠢く。  ――もう、入れて……欲しい。  淫らな願いが、涼正の頭の中を焼く。しかし、鷹斗が彼自身を取り出す素振りはなく、再び指が後ろの入り口をつついた。グッ、とさっきよりも太いそれが押し入ってくる感覚に涼正の足が突っ張った。そのまま浅い部分で数度抜き差しされ、慣らされていく。  ぐちゅ、と涼正が正気であったならば耳を塞ぎたくなる音が部屋に響いた。侵入を阻むような抵抗をみせる中をものともせず、鷹斗の指が奥へと進む。  流石に奥まで一気に穿たれた時には、みっしりと中を埋め尽くされる感覚にえづきそうになった。が、それも最初だけだった。指が中を往き来する度に、そこから得られる快楽の度合いが増す。 「……っふ、や……ん、ぁあっ!!」  良いところを指の腹で押され、中で指を開いたり閉じたりされるとどうしようもなく感じ。涼正は、咽び泣くように甘い声を上げた。  腰から下が溶けてしまいそうなほど、たまらなく気持ちがいい。もう、涼正のモノは腹につきそうな程に反り返り自ら溢した蜜でしとどに濡れていた。  涼正のドロドロになったそこを見て、鷹斗が笑う。 「……っは、やっぱりアンタ、めちゃくちゃエロい。……早くここに突っ込んでやりてぇ」  そう言って、鷹斗はぐちゅぐちゅとわざとらしく音を立てるように指を揺らした。擦られ敏感になったソコはそれだけでも感じ、甘く痒みを伴う感覚が涼正の全身に広がっていく。  そこに、胸から弾けるような刺激を加えられると涼正は喘ぎながらブルリと震え、絶頂の一歩手前まで簡単に押し上げられてしまう。 「ん、……ぁあ、ひ……ぅ……っ」  根元までせり上がったソレを吐き出したくて、気が狂いそうになる。  あと少しで達する事が出来るのに。政臣も鷹斗も、涎を垂らすように先走りを溢し続ける涼正のペニスに、あえて触れようとしない。  涼正は、いっそこの手でグチャグチャに擦り立ててしまいたい欲求に駆られるが、両手が縛られているためにそれも出来なかった。  それまで胸の尖りを弄り続けていた政臣の手が止まり、覆い被さるようにして顔が涼正の顔に近付いてくる。そうして、吐息が触れる距離で政臣はフッと甘く微笑んだ。 「涼正」  まるで恋人の名前を呼ぶかのように名前を呼ばれ、涼正の心が震えた。そのまま政臣は上下の唇で涼正の下唇を食むように触れると、ヌルリと舌を口腔内へと侵入させた。 「んっ、む……」 「っ、ん……」  舌先同士がヌルヌルと擦れあう感触。鷹斗とは違い、政臣は涼正が感じることを優先させるように動いてくる。  丁寧に口腔内を愛撫される感覚は、言い様のないものだった。  トロンと蕩けた瞳でキスを交す涼正の様子に、不愉快そうに鷹斗が鼻を鳴らした。どうやら、涼正と政臣のキスシーンがお気に召さなかったらしい。不機嫌そうな表情を浮かべた鷹斗の手が徐に、涼正の根元に伸びる。  そうして、ギュウ、と根元を強い力で堰き止められた次の瞬間。 「んぅッ!! んッ、ァ――――!!」  一気に指を後ろから引き抜かれ、涼正は目を見開きガクガクと体を揺らした。

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