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第六章 8

「涼正、マジで可愛い……」  明らかな欲情を宿した鷹斗がうっとりと囁きながら、涼正の顎先に軽くかじりつく。  真っ正面から野性味を帯びた双眸(そうぼう)が涼正を捉えた。赤みを帯びた茶色の瞳がギラギラと輝いている様子は美しく、涼正は危機的状況に直面しているというのに思わず見いってしまった。  だから、だろうか。ジィィッ、とファスナーを下ろす時に金具が奏でる音に涼正は気付くことができなかった。  ヌルッ、と滑るソレが涼正の性器を擦りあげる感覚に、涼正は目を剥いて声を上げた。 「っ、あッ!? な、何が――ッ」  何が起こったのか、確かめようと下肢を辿った先。涼正は見てしまった。いつの間にか露出された鷹斗の逞しいペニスが、涼正のモノにまるで戯れるかのようにぶつかり、擽っているのだ。  昨日も目にしたばかりであるが、日がある内に目にするとその凶暴さが際立って見えた。涼正のモノよりも一回り程大きく、いっそグロテスクな程に血管の浮き出たソレが見せつけるようにゆっくりと擦り付けられる。  その度に、にちゅ、にちゃッ、と粘着質な音が室内に響き、涼正の羞恥を煽った。 「ッあ、や……だ」  そう口にする涼正だったが、視線が逞しい鷹斗のペニスから離すことが出来ない。  鷹斗もこの状況に興奮しているのか。先からトロリと体液を溢し、それをまるで口移しでもさせるように涼正のモノの先端へと押し付ける。そうして、どちらが溢したものか区別がつかぬ程にぐちゃぐちゃに混ざりあった体液が、二本を伝い落ちシーツへ染みをつくっていった。 「ッ、は……嫌だとかいってるけど……涼正のここ、ドロドロになってるぜ」 「……ぅあ……ッ、あぁ……」  揶揄にも反応を返せぬほど、涼正は感じていた。噛み締めていた筈の唇は今や開きっぱなしで、そこから甘ったるい声がひっきりなしに溢れている。  鷹斗の熱い掌にくるまれ二本をまとめて扱きあげられると、涼正は健康的な肌色の喉を仰け反らせ、シーツの上でのたうった。  弾力があり、それでいて堅いモノがぶつかりあい。捏ねるように扱かれると涼正の目の前がスパークしたように光が散る。呼吸が苦しくて、酸素を求めるようにだらしなく出した舌は鷹斗に甘噛みされ更なる快感として涼正の中に蓄積された。 「……ッく、ハハッ……すっげぇイイ……。良すぎて……んッ、長くは持ちそうにねぇ」  額に汗を浮かべた鷹斗が、余裕がなさそうに言う。  前だけを寛げ、苦しそうに眉根を寄せる鷹斗の姿が薄い水の膜越しに涼正の視界に映りこむ。  それを目にして、涼正は綺麗だ、と思ってしまった。  もしかすると、襲い来る悦楽と鷹斗から立ち上る色気に自分の頭はおかしくなってしまったのかもしれない。 「……あ、……ぅあぁっ!!」  鷹斗の手の動きが速まり、体液が泡立つ程に上下に扱き上げられて涼正は手足を突っ張らせた。 「……涼正も、……っん、……イキそう、なんだろ……?」 「ふぅ、……い、や…だっ、……イキ、たく……ない……ぃあぁあっ!!」  これ以上おかしくなどなりなくない涼正は、泣きじゃくりながら頭を横に振る。体はこれ以上ないくらいに発熱し、汗が額や露出している肌の上を滑り落ちていく。苦しくて、苦しくて。体が、バラバラになってしまいそうなのに。イッた直後の真っ白になるあの感覚が、今の涼正には堪らなく恐ろしかった。   このまま全て塗り替えられ、浅ましい違う自分に作り替えられてしまうような気がする。その証拠に、身体が心を裏切りはち切れそうな程に欲望をたぎらせてしまっていた。  ぐちゅっ、ぐちゅ、と音を立てながら密着させリズミカルに擦りたてられ、吐き出したい欲求が涼正の根本の方でグルグルと渦巻く。 「嘘つき。……早く、イキたいくせに……っん」  鷹斗の嘲笑うような声が、遠くに聞こえた瞬間。ぐちっ、と指先で体液をこぼし続けるその場所を、開かせるように抉られて、涼正の身体は呆気なく達した。 「――――ぁああっ!!」  鷹斗の熱い掌の中で、涼正のモノが白濁を飛ばす。見開いた目の前でバチバチと火花が散り、悲鳴にも似た叫声が喉から迸る。心臓は早鐘を鳴らすように脈打ち、呼吸が止まってしまいそうだった。 「っ、俺も…………っ、くッ!!」  低く掠れた呻き声が涼正の耳に届き、生暖かいものがイッたばかりの涼正のモノへと降り注ぐ。呼吸が整わず犬のように舌を出しながらハッハッ、と息をする涼正の鼻孔に雪崩れ込んできたのは青臭い匂いだった。

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