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第八章 4
「あ、ぁ…っん!!」
涼正の頭の中に、甘い声がエコーがかかったように幾度も響いた。
――あぁ、聞きたくない。
そう思うのに、甘い声はするりと涼正の心の中に入り込んでくる。
「んっ、政臣!! いいっ、もっと!! 鷹斗、も…焦らさないで…くれ…」
分かりたくなどないのに、涼正はこの甘い声の持ち主が自分なのだと理解していた。
――お願いだ、止めてくれ!!
見たくない、聞きたくないのに、夢の中では涼正は目を塞ぐことも耳を塞ぐことも出来ない。ただ、いつもと同じようにこれから現れる光景を見ている事しか出来ない。
暗闇がうっすらと晴れて、淫夢が今日も涼正を苛む。
第三者のような視点で涼正が見ているのは、自身があられもない声を上げ腰を淫らに振り鷹斗や政臣に後ろから貫かれている姿だ。
嬉し涙を溢し、口から赤いぬめった舌を覗かせながら後孔で政臣を、鷹斗を貪っている。
――お願いだから、早く覚めてくれ!!
涼正の必死の願いも虚しく、行為は続けられる。
雄々しい二本の熱杭が涼正の後ろへと入れ替わり立ち替わりに挿入され、ガツガツと獣のように揺さぶられる。
涼正のモノは限界まで張りつめ、涎のようにダラダラと体液を溢しながら、揺さぶられるごとにピタピタと下腹を打った。
「涼正、……涼正っ」
「アンタが、好きなんだ……っ」
「んっ、あぁぁ……俺、も……好き……」
夢の中の涼正はとても嬉しそうに政臣と鷹斗の言葉を受け入れ、その身体を弓なりに反らせ張りつめたソコから白濁を吐き出した。
「ッ!!」
涼正は慌てて飛び起きた。
頭の中にはまだあの生々しい夢が現実のように居座っていて気分が悪いのも確かだが、それよりも下腹部にズクリとした熱が渦巻いていることに絶望的な気分になった。
苦々しい表情を浮かべ、涼正は視線を自分のスラックスの前へとやると、そこは布地を窮屈そうに押し上げている。
――……また、なのか……。
涼正は深い溜め息を溢した。
〝ひまわり園〟に寝泊まりするようになってからというもの、毎日この夢を見る。そうして、目が覚め、下腹部に疼くような熱を感じて視線を下げると決まって涼正のモノが芯を持っているのだ。
――っ、早く治まれ……。
抜いてしまった方が早いのは涼正にも分かっていたのだが、あんな夢を見た後に一人で慰める気にはなれず、下肢に伸びそうになる手を抑えながら治まるまで待つというのが最近では日常になってきていた。
今日もジクジクと熱を孕むそこから意識を逸らすように天井を見詰め、唇を噛み締め治まるまで堪えるつもりだった。しかし、数分程経っても熱は未だに涼正の中で燻り続け、布地を押し上げるそこは堅いままだ。
「……っ、ん……」
涼正の唇から熱い吐息が溢れた。蛇が地面を這うように、熱が涼正の全身を這い回る。
――耐えきれない……。
涼正の手がとうとう下肢に伸びる。
スラックスの前を寛げるのさえもどかしく感じながら、涼正はチャックを下ろしていく。
ジィィッ、と無機質な音と荒い吐息だけが室内に響いていた。
最初はトランクスの布越しに形をなぞるように涼正の指先が動く。焦らすように裏筋の部分を触れるか触れないかのタッチで辿ると、物欲しげに腰が揺れるのが自分でもわかった。
「っ、あ……ん…」
ゆっくりと布ごとペニスの棹部分を掴むと夢で聞いたような甘ったるい声が涼正の唇から溢れた。直接敏感な皮膚に触れていないもどかしさが更に涼正の自慰を煽る。
後ろめたい気持ちが胸の中にわだかまっていることを知りながらも、一度触れてしまった身体は止める事が出来ない。
涼正はせめて目を瞑り、下着の中から自身を取り出した。冷たい空気に晒された涼正のソレは、萎えることもなく腹につくほど反り返っている。
「ふぅ……ん、ん……」
涼正の指が意思を持ったようにペニスへと絡み付き、輪を作る。程よい締め付けの輪を上下させ擦りたてると、にち、にちっ、と粘着質な音がたった。
溢れる先走りがまるで涙のように棹を伝い、叢を濡らし、尻の間を滑り落ちていく。
――もっと……、欲しい……。
涼正の咽が鳴った。貪欲な思いに突き動かされるまま、片手が胸元に向かう。
服を捲りあげ素肌に指が触れた。腹部を這い上がり、なだらかな胸に辿り着く。
「ふ、ぁっ……!!」
期待するかのように凝ったソコを指が摘み上げた瞬間、涼正の艶やかな声が上がった。胸元から弾ける甘い快楽に腰が疼く。
――政臣はどういうふうにここに触れていただろうか?
涼正の指が思い出すように、動き出す。
円を描くように指の腹で小さく凝った乳首を転がし、時おり強弱をつけて二本の指で挟むと堪らなく善くて指が絡んだままの涼正のペニスからトロリと蜜が溢れ落ちた。
「ふ、ぅ……んッ…」
涼正は目を閉じ、ひたすらに快楽だけを追う。
爪を立てるように乳首を指先で捏ね、薄い胸の肉ごとやわやわと揉みながら、芯のある皮膚をグチャグチャと音を立てて擦る。
ここが職場であることも、胸にわだかまっている後ろめたさも。今、この時だけ涼正は全てを忘れ快楽に没頭していた。
涼正の瞼の裏に浮かび上がるのは、政臣と鷹斗の姿だ。
引き締まった身体を惜し気もなく晒し、差異のある雄を寛げたズボンの前から覗かせている。
夢の中の自分は、あの指で愛撫され、あの雄で貫かれ、あの声で囁かれていた。
『……欲しいんだろ?』
夢の中で言われた言葉が涼正の頭の中に甦る。
低い、艶やかな誘うような声音。それが、何度も政臣と鷹斗の声で脳内で再生される。
――――あぁ、もう駄目だ……。俺は………。
「欲し、い……、欲しいんだ……ん、んっ!!」
夢の中の自分と今の快楽に流される涼正が重なった瞬間だった。
胸を弄っていた涼正の指が伝い落ちた先走りでヌルリと滑る尻の狭間へと触れる。心の片隅では駄目だと思うのに、身体は独立しているかのように動きを止めない。
指先が後孔の縁を撫で、潜り込んでくる。
「ん、くっ……ぅ…」
しかし、慣らしていないせいか思うように進まず、ひきつれたような痛みが涼正を襲った。
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