17 / 80

第四章 5

 〝やめてくれ〟と何度も懇願する涼正を無視し、四條は執拗にソコばかりを攻めた。  もう、弄られ過ぎて息を吹き掛けられるだけで辛い。 「っあ、あぁ、……は、ぁ……ッ」  ようやく涼正が四條の執拗な乳首攻めから解放されたのは、涼正の意識が永遠に続く微熱のような快楽に白み始めた頃だった。  鼓動が驚くほど速く、呼吸が落ち着かない。涼正は荒い呼吸を室内に響かせながら、ぼんやりと四條を見上げた。  この男に触れられるのは嫌な筈なのに、身体は心を裏切り、ろくな抵抗も見せなくなっていた。  内側に燻り、涼正を苛み続ける熱が出口をもとめ暴れている。  涼正の下肢の中央。髪と同色の叢(くさむら)を掻き分けるように勃ち上がった涼正の雄は、まだ触れてさえいないのに、待ちきれないとばかりに震え、その先端からトロリと粘度の高い蜜を溢れさせた。  先走りが棹を伝い落ちる感覚でさえ、涼正を悶えさせる。縛られてさえいなければ、涼正は自分の手で慰めていたかもしれない。  しかし、縛られた両手ではそれも出来ず。涼正は、内側にこもる熱を少しでも吐き出そうと浅い呼吸を繰り返しながら視線をさ迷わせた。 「ふふっ、辛いんだろう? 楽にしてあげようか?」 「い、ら……ない……」  四條に頼むくらいなら、我慢した方がはるかにマシに思えた涼正は意地で頭を横に振った。  そんな涼正を見て四條は僅かに驚いたように目を見開く。 「ふむ、思った以上に頑張るね。しかし、それでは私が困るんだよ。時間もそうあるわけでもないし、少し強引な手をとらせてもらうよ」  四條がそう言うやいなや、涼正の片足の拘束を解きテーブルの上に膝を立て乗せると、双丘(そうきゅう)の奥、本来排泄にしか使わない場所へと無遠慮に触れてきた。 「えッ――……ゃ、離せッ!!」  四條の指が窄(すぼ)まりに触れ、その先の行為を連想させるように浅く指を差し入れてきた瞬間。  涼正は反射的に自由になる片足をバタつかせていた。それは、四條に当たりこそしなかったが、不快にさせるには充分だったようで、涼正の足は簡単に掴まれてしまう。 「……頼むから、大人しくしていてくれないかな? 君のヌード写真、ばら蒔かれたくないだろう?」  ギリッと四條の掴む手に力がこもる。  痛みに眉を寄せる涼正の目の前に突き出された携帯。そこに映っていた画像に、涼正は目を見開いた。 「ッ!?」  携帯の中にはぐったりとした涼正がテーブルの上に全裸で縛られている。  ――……嘘、だ。俺は、こんな格好で……。  淫猥で、惨めな格好をしているソレを、涼正は自分だと認めたくなかった。  しかし、画像は顔さえも隠されておらず、涼正を知る人物なら一目でわかってしまう。  ――……こんなのを、ばら蒔かれたら……。  涼正はゾッとした。これが人目に晒された時点で、保育園で保育士を続けることは出来なくなるし、息子達にも見離されることが容易に想像できたからだ。  保育士を続けられないのも辛いが、涼正にとっては何よりも大切な息子二人に見離される方が恐ろしい。それこそ、生きる目的を失うようなものだ。 「……脅す、気か?」  四條を睨み、尋ねた涼正だったが腹はすでに決まっていた。 「まぁ、結果的にはそうなるね」  涼正の出す答えをすでに知っているのか、四條の声には優越感が滲む。  見ているだけで虫酸が走る四條の顔を、涼正は明らかな敵意を含んだ視線で睨み付ける。 「最低、だ……な、……ぁあッ!!」  せめてもの抵抗で罵りを口にした瞬間、四條の人指し指がまだ慣らされてもいないキツい窄まりに捩じ込まれ、涼正は内側から体を引き裂かれるような苦痛に悲鳴を上げた。 「何とでも言えばいいさ。君は私には逆らえないんだ、抵抗すればするだけ君が傷付くだけだ、……と言いたいところだが、私も手酷くするのは好きではないのでね」  四條の指が一関節分程埋ったところで引き抜かれる。  涼正が体内から異物感が消えたことに安堵する間もなく、今度はヒヤリと冷たい感触を伴ったものが窄まりに触れた。 「……ッ、何を……」 「ハンドクリームだよ。何もないよりはマシだろうと思ってね」  ヌルリとしたクリームを擦り込むように塗られ、浅く指を挿し込まれる。涼正の体温で溶けたクリームが双丘の狭間を伝い、テーブルの上に落ちるのが酷く気持ちが悪い。 「……っ、う」  何度かそれを繰り返された後、先程よりも解れた後孔に四條の指がぬぷり、と潜り込んできたのに、涼正は小さく呻き声を上げた。  最初に捩じ込まれた時より痛みは少ないが、やはり異物感には馴れず、涼正は無意識に四條の指を食い締める。  そんな涼正の様子に、四條がフッと笑う。 「力は入れない方がいい。裂けでもしたら、困るだろう?」 「……そ、……な、の……無理――ッ!!」  〝無理だ〟と言おうとした瞬間、後孔に指を埋めた手とは別の、涼正の片足を拘束していた手で乳首に触れられ、涼正は息が詰まった。  散々弄られ、赤く色付き敏感になった突起にぬるぬるとハンドクリームを塗りたくられ、痛みで萎えかけていた涼正のペニスがぴくり、と反応する。 「あ、あぁッ……いや、だッ!!」  にゅるり、と四條の指から逃げそうになる肉を摘まみ、押し潰され、涼正の腰が跳ねた。  乳首に意識が集中しているのを見計らって、四條の指がぐるりと内壁を撫で、引き抜かれ、そしてまた大量のクリームを伴って侵入し、内壁に塗り込むように動かされる。  それを何度か繰り返され、下肢から、ぬちっ、と濡れた音が聞こえ始めた頃、四條の指が一本増やされた。 「……ッあ、も……キ、ツい……」  途端に圧迫感を感じ、限界を訴えるように涼正は首を振った。 しかし、四條は手を止めるどころか涼正の中で二本の指を拡げるように動かし、掻き回す。  二本の同時に縁ギリギリまで引き抜かれると涼正の意思とは関係なく壁が惜しむように四條の指に絡んだ。 「君のココ、だいぶ解れてきたね。私の指を美味しそうに飲み込んでいるよ。それに、気付いているかい?」  ――一体、何に気付くというのだろうか?  わからない涼正は、与えられる刺激に堪えながら尋ねた。 「……な、に?」  四條の視線が涼正の身体を上を滑り、ゆっくりと下に移動してとまる。 「ほら、触っていないのにこんなにも先走りを溢して」 「――ッ!!」  辿り着いたのは下肢の中央。そこには、確かに痛みで萎えていた筈の涼正の雄が、今では腹につきそうなほど反り返り勃っていた。  尿道口からは新しい透明な蜜が次から次に、ぷくりと玉のような滴(しずく)になって溢れ落ちる。  ――……そ、んな……。  後ろで感じてしまったなんて嘘だ、と涼正は否定したかった。  しかし、現状はどうだ。四條の手によってアナルを掻き回され、胸の尖(とが)りを弄られると腰の奥から痺れるように感じ、涼正は身体を跳ねさせてしまう。  事実から目を背けるように涼正は瞳を瞑るが、それが失敗だったとすぐに気付いた。  真っ暗な視界の中、体内を四條にまさぐられ、耳からもぬちっ、ぬちゃ、と粘着質な音に犯されていく。  身体中が性感帯にでもなったかのように敏感になりすぎてつらい。肌を撫でる空気でさえも、今は涼正を苛むものでしかなかった。  ――こ、んな、感覚……しらな……っ。  強烈で、今までに味わったことのない快楽に恐怖を感じた涼正は四條に許しを請う。 「は、あぁ……っ、も……許し……」  しかし、四條が赦しを与える筈もなく、指の腹を腹側に向け探るように涼正の壁を撫でた。そして、小さくしこりになっている部分に触れた瞬間、涼正は絶叫を喉から迸らせていた。 「あ、アァッ!! ――……あ、……はぁっ」  視界がチカチカと瞬いて、腰から下が溶けてしまいそうな感覚だった。  涼正は強すぎる悦楽を上手く受け流すことも出来ず、ただ荒く呼吸を繰り返す。そんな涼正の様子など気にしていないのか、四條は宝物でも見つけた子供のように無邪気に笑う。 「うん、ココみたいだね」  確認するようにそっと撫でられ、涼正は目を見開いた。  腰の奥からせりあがってくるような甘い疼きに体が跳ねる。 「ッあ――……も、やだ……そこ、触る……な、ッああぁ!!」 「残念だが、君のお願いは訊いてあげられないな。それに、〝やだ〟ではなく〝イイ〟んだろう?」  涼正の耳元で囁かれた四條の言葉に、涼正は背筋がゾッとした。  加減した力で撫でられ、これほどの悦楽を涼正にもたらすのだ。  ――もし、これを指で抉られでもしたら……。  そう考えた涼正だったが、その直後、身をもって実感することとなる。 「ほら、一度イクといいよ」  四條の悪魔の囁きとともに一際強く、指にしこりを抉られる。 「ひっ――……ァ、ああぁッ!!」  その瞬間、涼正は目の前が弾けたように真っ白になり、腰を跳ねさせ限界まで膨らんだ雄から白濁を飛ばしていた。

ともだちにシェアしよう!