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第四章 6
体が小刻みに震え、いつまで経っても射精感が消えない。
いまだに続く悦楽に酔っているのか、涼正の雄からは勢いは無くなったもののトロリと白濁の残滓が尿道口から溢れていた。
「ふふっ、強烈だっただろう? ココ、癖になる人もいるらしいからね」
「う、ぁあ……っ」
四條の指がわざとしこりを掠め、中から抜け出ていく感覚に涼正はゾクゾクと背筋を震わせた。
中を掻き回すものが無くなったのを惜しむかのように、壁にきゅっ、と力がこもる。
――……うそ、だ。
徐々にだが、男を受け入れる身体へ変わっていっている事実を突き付けられたようで、涼正は狼狽した。
「何を考えていたのかな?」
涼正の思考を断ち切るように、四條の指が再び体内へと押し込まれる。
「うっ、ぁ……あ、ぁあッ……」
さっきよりも縁を拡げられる感覚に、涼正はすでに焦点のあっていない瞳から涙を溢す。歯の根が噛み合わず、唾液が顎を伝いテーブルへと滴り落ちた。
圧迫感はあるが、慣らされ始めた壁は待ち望んでいたとばかりに四條の指に絡んだ。
「うん、いい具合にほぐれてきたね」
ゆっくり、そして次第に速く指を抜き挿しされ、白濁を吐き出し萎えていた雄にじわじわと熱が集まりだす。
「っ、ん……は、ァあ……ッ」
内側を軽く爪で引っ掻かれ、涼正の胸元に顔を寄せた四條に胸の赤く淫らな粒を甘噛みされると、鼻にかかるような甘い声が出て涼正は耳を塞ぎたくなった。
弱い刺激を与えつつ、時折中のしこりを的確に抉る四條の巧みな手技に翻弄され、涼正はあっという間にのぼりつめていく。
――これ以上感じたくなどないのに。
体は休む間もなく昂らされ、涼正は心と身体がバラバラになるのを感じた。
「――ッ、あぁ……ァ、う゛」
一際強くしこりを指の腹で押され、二度目の精を吐き出そうと身体が震えた瞬間。
四條によって急にペニスの根本を戒められた涼正は痛みと塞き止められる苦しさに、涙を溢した。中途半端に燻った熱が、身体を内側から溶かしていく。
「まだダメだよ。君ばかり気持ちよいのはズルいだろう?」
――ズルいもなにも、……勝手にしてるのは、そっち……だろう。
熱に浮かされた頭で涼正がぼんやりとそんな事を考えた時だった。
ズルリ、と四條の指が後孔から一気に引き抜かれる。壁に逆らうようなその動きに、涼正は紛れもない悦楽を感じていた。
衣服の前を乱した四條が自身の性器をズボンから取り出し、見せ付けるように涼正の前で扱く。
四條が興奮しているのがわかるように、四條の性器は天井を向き、雄々しく勃ち上がっていた。
「これが、君の中に入るんだよ」
ヌルリとぬるつく先走りを塗り込むように四條の先端で蟻の戸渡りをなぞられる。
「……ッ」
戒められたままの涼正の雄が震え、圧迫するものの無くなった壁が物欲しげにひくつくのが、涼正自身にもわかった。
心は嫌だと叫んでいる筈なのに、身体が次に訪れるであろう淫らな行為に期待し熱を帯びる。吐き出す吐息は熱く、胸の中から焼かれているようだ。
縁を擽るように熱い四條の性器が押し付けられ、ぬちゃ、と淫猥な音を残し離れていく。 その度に、四條によって変えられた後孔がヒクヒクと浅ましく開閉を繰り返す。
無意識の内に涼正の腰が揺れる。それでも、涼正の口から欲しいとねだるのは嫌だった。
ねだってしまった時点で、四條に仕方無しに犯されたのだと言えなくなるような気がしたからだ。
「ッ……ふ、ぅ……」
咽まで上がってきたその言葉を必死に押し留め、耐える。
いっそ、与えられるのが痛みだけならよかった。それならば、涼正はこんな辛く惨めな気持ちを味わわずにすんだかもしれない。
「そろそろ限界なんだろう?」
悪魔の囁きが涼正の耳許でした。アナルの縁に押し付けられた四條の熱が、涼正の肌をチクチクと焼き興奮を煽る。
四條の言う通り、限界だった。
「はや、く……済ませれば、いい……だろ……っ」
乱暴な言い方になったのはせめてもの抵抗だった。
限界まで追い詰められて尚、虚勢をはろうとする涼正の様子に四條が面白いものを見たとでも言いたげに唇を歪める。
そして、そのまま涼正の片足の膝裏に手をいれ抱えるとグッと体重をかけてきた。
「う゛、ぁ……あ、ぁあ……」
縁が目一杯拡がり、四條の張り出した先端を呑み込んでいく。
指とは比べ物にならない、太く熱い鉄杭のようなものに貫かれる感覚に涼正は呻き声を上げた。
内臓が圧迫され、今にも食い破られそうな気がして恐ろしい。 一番太いところを呑み込んだ辺りで、一度腰を進めるのを止めた四條が熱い吐息を吐き出した。
「キツ、い……な。少し、力を抜くんだ……」
「で、きな……い、ッあ……」
子供をあやすように、汗で涼正の額に貼り付いた髪を四條の指に払われる。
涼正とて喰い締めようと思って、締めている訳ではないのだ。そう言いたかったのだが、鈍痛だけではなく悦楽が感覚に混じり始めると涼正の口から甘い声が溢れだした。
「ふ、っ……ん、ぅ……ッ」
体内に熱い楔を埋め込んだまま、四條に首筋から胸元にかけてのラインを舌で辿るように舐められると背筋が痺れた。
最奥を暴かれ、不快だと思うのに身体は四條のモノに慣れようと苦痛を快楽へとすり替えていく。
時折、甘噛みするように肌に歯をたてられるとそこから甘ったるい刺激が広がり、四條のモノをくい締める力が緩むのがわかった。
それを見越してなのか。四條は涼正の力が抜けた隙に、深くまで埋め込んだ怒張を一気にカリ下まで引き抜いた。
「っ、あぁ!!」
ビクン、と涼正の背が強烈な刺激に仰け反った。四條はそんな涼正の様子を楽しむように、ゆっくりと腰を元の位置まで進めていく。
「ぅ、あ……ッ」
狭い所を抉じ開けられ、柔らかい粘膜をなぶられる苦しみと背中合わせの快感に涼正は呻き声を上げ、腰を揺らした。
「あぁ、君の中……熱くて、気持ちがいいよ」
四條が涼正の肌に唇を寄せながら、ゆっくりと引き抜いては、また元の位置まで穿つを繰り返す。もどかしいまでにゆっくりとした抽挿は確実に涼正の理性を奪っていった。
双丘に四條の腰が当たるほど限界まで四條のモノを呑み込まされ、中の壁をエラでこそげるように引き抜かれると堪らない程の刺激が下肢を溶かした。
力が入らない足を抱えられ、揺さぶられる中。四條のエラがはった部分が先程散々弄られたしこりを掠めた瞬間、涼正の体に電気が走ったようになった。
「あ、……ぁあッ!!」
閉じきれない涼正の口からは唾液と狼狽したような声があがった。
苦しいくらいに心臓が脈打つ。 それなのに、身体は先程の麻薬のように染み込み、涼正を虜にする感覚を欲しがり浅ましい反応を見せる。
収縮する中を四條の巨大なモノに掻き回され、しこりを狙いすましたかのように先端で押されると、足の付け根がブルブルと震え、それだけでイってしまいそうだった。
しかし、涼正のペニスの根元は戒められたままで、イクことは叶わず。赤く、はち切れそうな程成長したそれが解放を訴えるように切な気に震えた。
「……っも、手……はな、し……ッ」
イキそうなギリギリの所を常に歩かせられ、四肢が突っ張る。
下腹に渦巻いた熱に食い破られてしまいそうだ。
「イケなくて、つらいかい?」
そんな四條の声が遠くから聞こえた。
意地も、理性も快楽の前に吹き飛んだ涼正は素直に頭を縦に振った。少し前の涼正なら絶対に頭を縦に振らなかったはずだ。
それほどまでに、涼正は追い詰められていた。
「ほら、イクといい」
漸く戒めていた手が離れ、中を強く抉られる。内側から変えられてしまうような気さえする濃い欲望を呑み込まされ、目眩がした。
「ひ、っ――……ぁ、ああァッ!!」
目の前が真っ白に染まり、大きな悦楽の波に呑み込まれた涼正は、縛られた手足が吊るほどに突っ張らせ、ガクガクと身体を震わせながら二度目の射精をした。
二度目だというのに濃い白濁が涼正の腹の上に滴り落ちていく。
射精に誘発されたように内壁が四條のモノを搾り取るように蠢き、堪えきれないとばかりに四條が小さく呻く気配がする。
「っ、出すよ……」
余裕がないとばかりに抽挿が速まり、一際強く涼正の中を穿った瞬間。四條が呻き、体を震わせた。
酷く熱く、ドロッとした飛沫が涼正の最奥を叩く。
「ぁ、あぁ……ッ」
涼正はその熱さに身を悶えさせ、ズルリ、と後孔から四條の萎えきったモノが抜かれる生々しい感触を感じたのを最後に意識を手放したのだった。
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